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鬼の姦淫

第5章 地下の墓


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「観月、時招! お前らんはまた!!」

野太く大きな怒鳴り声で、ばちっと私の目が覚めた。

「父ちゃん、だって、あんときは仕方なかったんだよ。 ちゃんと時招とも話し合って」

「少なくともあんな場を見付けたら放ってはおけませんし」

「学校戻って、うちっとこに連絡するとか、やり方はほかにもあったろが! 佐伯が去年、大怪我したのを忘れたんか」

なにごとかと思い、私はそろそろと肘をついて、身を起こしかけた。
どうやら敷かれた布団に寝かされていたらしい。


私の気配に気付いたのか、時招くんがこちらの方に振り向いた。

「……ああ、坂下先生。 お目覚めですね。 ご気分はいかがですか」

時招くんが歳のわりに思慮深そうな目をすがめ、私の脇に膝をつく。

その向こうで必死に言い訳してる観月くんにつっかかってる男性は……見覚えがある。
縦にも横にも隆々とした体格で、でも気のよさげな顔付きの。
たしか、名前はそう。 五嶋さんだ。

そして、ここは?
布団から上半身を起こした私は、きょろきょろ首を左右に振った。
どうやら一般家庭の居間のような雰囲気だ。

「あっ、父ちゃん父ちゃん、センセが起きたよ!」

「おお、嬢ちゃん…じゃなくって、先生。 平気ですかい!?」

五嶋さんが布団の傍にドスドスと音を立てて駆け寄ってきた。
太い眉を下げ、心配そうに私の様子を覗き込む。

「まさかあのときの女の子が、観月たちの担任になられるとは。 怪我はありませんかい」

「い、いえ。 お久しぶりです」

どうやら、五嶋さんが双子の父兄ということらしい。
それにしてもあまつさえ、気絶するとは情けない。


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