
野良猫さん。
第1章 箱入り
「パンのくず、寝癖より恥ずいぜ?」
「‥‥お前、遅刻寸前だろ」
イラッとした表情で慌ただしく出る達城を見送り、洗面所で顔を洗った。
そういえば昨日でタオルのストックが無くなっていたのに、もうフカフカのタオルが何枚も並んでる。
「洗濯もしてくれたのか‥」
大手出版社に勤める達城は帰宅時間が毎日まばらで、睡眠時間なんて微塵も無いほど出勤時間が早い。
両親のいないオレ達にとって協力して生活するのは当たり前だけど、達城への負担がでかすぎる。
「家事はオレがやるって言うのに‥」
顔を拭き終え、不意に鏡を見た。
