恋、しません?
第1章 第一話 男友達の家政婦致します
「日向が家に来てから、不思議な事に、親父と母さんの仲は上手く行く様になったんだ。今にして思えば、多分、日向がそうなる様に頑張ったんだと思う。日向は親父に可愛がられていたし、何より母さんに懐いてた。それに、俺の事、しょっちゅう兄貴、兄貴って追い掛け回してさ。俺は、そんな日向がどうしようもなく可愛くなったんだ。愛しく思えた。日向は、俺がこんな風になった今だって俺の側にいてくれてる。俺には過ぎた弟だよ、本当に」
そうやって日向の事を話す雨の目は優しく、穏やかだ。
菊子はそんな雨を見て「目黒さん、日向さんの事、好きなんですね」と言う。
雨は笑う。
「ああ、大好きだよ。だから、大好きな日向と大事な友達の菊子が仲良くしてくれたら、俺は凄く嬉しいんだよ」
そんな言い方はずるい。
そう思いながらも、菊子は、「はい、目黒さんのお望みのままに」と答えていた。
菊子の答えに雨は、とびきり嬉しそうに微笑んだ。
敵わないな、目黒さんの笑顔には。
菊子は心の中で呟く。
目黒さんって、誰に対しても、こんな風にして笑うのかしら。
だったら何?
と菊子は考える。
「菊子、どうした。怖い顔してる」
不意に訊かれて、はっとした菊子は取り繕う様に残りのピザに手を伸ばす。
「別に、何でも無いです。怖い顔なんてしてません。目黒さんの気のせいです」
「本当にそう?」
「しつこい! うっ!」
食べながら喋っていた菊子は喉にピザを詰まらせた。
急いでペリエを瓶に口を付けて喉に流し込む菊子。
「お前、何やってるんだよ! 大丈夫か?」
雨が慌てる。
「ゲホッ……大丈夫です……」
涙目の菊子を、雨がやれやれと言う様に見ている。
菊子は恥ずかしさを誤魔化すようにピザに再び齧りついた。
「菊子」
「何です?」
「顔にチーズが付いてる」
「えっ」
菊子は自分の口元を探る。
「そこじゃない。左だ」と雨。
菊子は左側の唇の近くを探ってみる。
しかし、チーズの存在を掴めない。
「もっと上」
雨に言われて指先を動かす菊子。
「いや、もう少し下だ」
雨はじれったそうに言う。
そうやって日向の事を話す雨の目は優しく、穏やかだ。
菊子はそんな雨を見て「目黒さん、日向さんの事、好きなんですね」と言う。
雨は笑う。
「ああ、大好きだよ。だから、大好きな日向と大事な友達の菊子が仲良くしてくれたら、俺は凄く嬉しいんだよ」
そんな言い方はずるい。
そう思いながらも、菊子は、「はい、目黒さんのお望みのままに」と答えていた。
菊子の答えに雨は、とびきり嬉しそうに微笑んだ。
敵わないな、目黒さんの笑顔には。
菊子は心の中で呟く。
目黒さんって、誰に対しても、こんな風にして笑うのかしら。
だったら何?
と菊子は考える。
「菊子、どうした。怖い顔してる」
不意に訊かれて、はっとした菊子は取り繕う様に残りのピザに手を伸ばす。
「別に、何でも無いです。怖い顔なんてしてません。目黒さんの気のせいです」
「本当にそう?」
「しつこい! うっ!」
食べながら喋っていた菊子は喉にピザを詰まらせた。
急いでペリエを瓶に口を付けて喉に流し込む菊子。
「お前、何やってるんだよ! 大丈夫か?」
雨が慌てる。
「ゲホッ……大丈夫です……」
涙目の菊子を、雨がやれやれと言う様に見ている。
菊子は恥ずかしさを誤魔化すようにピザに再び齧りついた。
「菊子」
「何です?」
「顔にチーズが付いてる」
「えっ」
菊子は自分の口元を探る。
「そこじゃない。左だ」と雨。
菊子は左側の唇の近くを探ってみる。
しかし、チーズの存在を掴めない。
「もっと上」
雨に言われて指先を動かす菊子。
「いや、もう少し下だ」
雨はじれったそうに言う。