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恋、しません?

第1章 第一話 男友達の家政婦致します

「んー、でも、色々買いたいから一緒に行くよ。それに俺も家に閉じこもってばかりじゃつまんないしさ」
 どうしても一緒に行きたいらしい雨に菊子は仕方ないなという顔をして、「なら、一緒にどうぞ」と両手を広げて言った。
 菊子がそう言うと、雨は目じりに皺を寄せて頷く。
「じゃあ、出掛けよう。その前に、菊子、スーツケースと鞄を自分の部屋に運んでおいで。俺もその間に支度しておくから」
「分かりました。じゃあ、私の荷物、片付けて来ます」
「ああ。スーツケースは引きずって行って良いから」
「ありがとうございます」
「うん、じゃあ、また後で」
「はい」
 菊子と雨はお互いリビングダイニングを出るとそれぞれの目的の場所へ向かった。
 雨は自分の部屋へ。
 菊子は応接間に向かいソファーに置いたままの鞄を取りに。
 菊子は応接間に入り鞄を手に取ると、そのまま玄関へ向かう。
 そして、スーツケースの持ち手を、「よいしょ」と引き上げると廊下を滑らせて運んだ。

 綺麗な廊下。
 何か、傷付けちゃいそうで怖いな。

 そう思っても、スーツケースを持ち上げて運ぶのも大変そうだった。

 廊下の端、階段のある所までスーツケースを運ぶと、菊子にはここからが大変だった。
 菊子の部屋がある二階まで、階段を傷付け無い様に一段一段慎重にスーツケースを運ぶ。

 ううっ。
 地獄。

 菊子は、やっとのことで部屋たどり着くと、ベッドに鞄を、どさりと載せ、そして、スーツケースを何処に置くか悩んで、結局、部屋の入り口の隣に置いた。
「ふぅ」
 菊子は腰に手を当てて一息ついた。
 何げなく視線を移せば、ドレッサーに映る自分の顔が見える。
 髪が乱れているのに気が付いて菊子は指先で髪を整えた。

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