恋、しません?
第1章 第一話 男友達の家政婦致します
「これから、応接間に案内するから。会わせたい奴がいるんだ」
そう言って、雨は車椅子を廊下の方へ動かした。
「ちょっと待って」
菊子が慌てて雨の後に続く。
会わせたい奴と聞いて菊子はピンと来ていた。
雨には、同居している弟がいるらしいのだ。
多分、会わせたいのはその弟だろう、と菊子は予測した。
応接間は廊下に入って直ぐの部屋だった。
応接間への扉は引き戸になっている。
それを、雨が開ける。
雨はするりと車椅子を応接間の中へ滑り込ませると、菊子に入って来るように言った。
「お、お邪魔します」
菊子が応接間に入ると男が一人、立ったまま腕を組んで白いソファーの横にいた。
菊子は彼の姿をじっくりと見た。
茶色い猫っ毛の髪。
目は鳶色。
背は高かった。
着ている服は、上は黒のパーカーに下はジーンズ。
彼の表情はムスッとしていた。
「菊子、紹介するよ。俺の弟の日向(ひなた)だ。日向は二十六歳だから菊子より二つ上だな。ほら、日向、今日から住み込みの家政婦として働いてもらう野宮菊子だ。挨拶しろ」
雨に言われて、日向は菊子に「木沙(きさ)日向です」と言って、むすっとした顔のまま小さくお辞儀をした。
「野宮菊子です。よろしくお願い致します」
菊子は深々と頭を下げてお辞儀をする。
雨と日向は苗字が違っている。
雨は目黒で、日向は木沙。
その事を菊子は疑問に思ったが、口には出さなかった。
「日向は、俺の身の回りの世話をしてくれているんだ。こんな体だから日向がいてくれてとても助かってる」
雨がそう言うと、日向は照れくさそうな顔をした。
さっきから、むすっとしちゃってたけど、可愛い所もあるじゃないの。
そう思って、菊子は、にんまりとする。
「何、笑ってるんだ」
日向が菊子を睨みながら言う。
「別に、何でもありません」
内心、舌を出していたが、すました顔で菊子は答えた。
「日向、菊子に噛みつくなよ。この女はよく笑うんだ、気にするな」
そう言う雨も、良く笑う。
そう言って、雨は車椅子を廊下の方へ動かした。
「ちょっと待って」
菊子が慌てて雨の後に続く。
会わせたい奴と聞いて菊子はピンと来ていた。
雨には、同居している弟がいるらしいのだ。
多分、会わせたいのはその弟だろう、と菊子は予測した。
応接間は廊下に入って直ぐの部屋だった。
応接間への扉は引き戸になっている。
それを、雨が開ける。
雨はするりと車椅子を応接間の中へ滑り込ませると、菊子に入って来るように言った。
「お、お邪魔します」
菊子が応接間に入ると男が一人、立ったまま腕を組んで白いソファーの横にいた。
菊子は彼の姿をじっくりと見た。
茶色い猫っ毛の髪。
目は鳶色。
背は高かった。
着ている服は、上は黒のパーカーに下はジーンズ。
彼の表情はムスッとしていた。
「菊子、紹介するよ。俺の弟の日向(ひなた)だ。日向は二十六歳だから菊子より二つ上だな。ほら、日向、今日から住み込みの家政婦として働いてもらう野宮菊子だ。挨拶しろ」
雨に言われて、日向は菊子に「木沙(きさ)日向です」と言って、むすっとした顔のまま小さくお辞儀をした。
「野宮菊子です。よろしくお願い致します」
菊子は深々と頭を下げてお辞儀をする。
雨と日向は苗字が違っている。
雨は目黒で、日向は木沙。
その事を菊子は疑問に思ったが、口には出さなかった。
「日向は、俺の身の回りの世話をしてくれているんだ。こんな体だから日向がいてくれてとても助かってる」
雨がそう言うと、日向は照れくさそうな顔をした。
さっきから、むすっとしちゃってたけど、可愛い所もあるじゃないの。
そう思って、菊子は、にんまりとする。
「何、笑ってるんだ」
日向が菊子を睨みながら言う。
「別に、何でもありません」
内心、舌を出していたが、すました顔で菊子は答えた。
「日向、菊子に噛みつくなよ。この女はよく笑うんだ、気にするな」
そう言う雨も、良く笑う。