I‘m yours forever
第1章 美月、傷つく
その後は黎一さんが事前予約していた最上階にあるスパを使用した。
天然温泉、ボディケア、エステが完備されており、その他スカイラウンジには展望だけでなく、軽食やドリンクやデザートも楽しめる仕様になっていた。
はぁ....癒される。
天然温泉とサウナと何度か行き来し、最後は汗をシャワーで洗い流すと、漸く塞ぎ込んでいた気分が晴れていくのを感じた。
髪を備え付けのドライヤーで乾かし、ルームキーを持って先に部屋へ戻っていると思われる黎一さんの元へと急いだ。
「おかえり。」
部屋へと戻ると、読書に勤しんでいた黎一さんと目が合った。その声は相変わらず柔らかい。
「ただいま。」
ニコニコと笑みを浮かべながらそう言うと、窓際の椅子に腰掛けた黎一さんの向かいの椅子に座った。
テーブルの上には、つまみも酒も無かった。
「楽しめたようで何よりだ。眠いんじゃないか?」
黎一さんは私に視線を合わせはするものの、ブックマークを挟んだ洋装本から手を離す事はしなかった。
「まだ10時前ですよ(笑)子どもじゃないんですから、全然起きてられます。」
「私は夕方から外出だったが、お前は日中ずっと買い物だっただろう?休憩を挟んでも案外疲れるものだ。」
「買い物で歩き回るのは慣れてます。疲れてません。」
「無理をするな。食欲も無かっただろう。先に休みなさい。私はこれを読み終えてから寝るとする。」
そう彼は言うと何事も無かったのように、私から視線を逸らし、再び本を広げてページを捲り始める。