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主治医との結婚生活

第2章 出会い

「コラ! 
そういうのは好きな人とするものです!」

奏真先生に冷静な態度で注意されて、
私は更に悲しくなった。


「先生は彼女いるの?」

私の質問を先生は無視する。

「…今の、ファーストキスだったりして…」

「はぁ?! 何言ってんの!そんな訳…!」

じ〜っと先生を観察する。

顔を赤くしてムキになって否定しようとする
先生に、私は喜んだ。

「へ〜♡ 先生のファーストキスは私なんだぁ♡
嬉しいなぁ♪」

顔を真っ赤にして唇を押さえる先生に
顔を近づけて微笑む。

「小学生のクセに…! マセガキ…!」

こんな調子で…
私は先生に猛アピールをしたけど、
8歳年上の大学生のお兄さんはそんな事では
陥落してくれなかった。

ひと夏の恋で終わらせたくなかった私は
苦し紛れにこんな事をお願いした。

「ねぇ 先生? もし私がまた先生の前に
現れたらキスしてよ…。」

先生は真剣な顔の私に苦笑いした。

「…そうだなぁ…。
再会した時に明ちゃんが可愛くなってたら」

先生が言い終わる前に
私は先生の唇に唇を重ねた。

「約束… よ…?」

先生は今度は笑って茶化さなかった。
かわりに 静かに流れた私の涙を優しく拭って
くれた。


それから… 何度 大澤診療所に行っても
先生には会えなかった。



先生に また 会いたい…

そんな気持ちから、私は看護師の道を目指した。

大学病院で働いているという情報だけを頼りに、
遊びも恋愛も目もくれず、必死で勉強した。

動機は不純だったが、私はちゃんと看護師という
仕事を好きになり、やりがいを感じていた。

自分の過去の身体の弱さを経験に、
患者さんに信頼される…、先生達に頼られる
看護師になりたかった。

何より 奏真先生に会った時に、
ガッカリされる事は 1番避けたかった。


私はそうして晴れて看護師資格を取得し、
先生の勤務する大学病院の小児科に
配属される事になった。

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