テキストサイズ

主治医との結婚生活

第10章 仕事

「これは失礼…!
コップと間違えてしまったよ…!」

そのお客さんは 何でもない事の様に 
笑い飛ばしていたが…

絶対ワザとだ…! と煌大くんと私は見合わせる。

「気をつけて下さいね? 今日は大澤さんの旦那様も見えているので、ぶっ飛ばされちゃいますよ?」

煌大くんは笑顔で 奏真さんを見やる。

奏真さんは驚いて、何とも言えない顔をしていた。

私は 奏真さんを巻き込んでしまって 
申し訳ない気持ちになる。

男性客は青ざめて、それから大人しくなった。


「何か 巻き込んじゃって ごめんなさい…」
私はこっそり 奏真さんに謝罪する。

「何? 明花ちゃんに好意を持ってる人なの?」
「ええと…」

奏真さんと話している途中で 
煌大くんが戻って来た。

「あの客の 後の対応は 全部俺がしますから。
明花さんは関わらなくて良いです…!」

毅然とした煌大くんの対応が頼もしい。

「ありがとね」
私がコソッと煌大くんにお礼を伝えると、

「え? 何かお礼くれるんすか? 
アリガトウゴザイマス!」

煌大くんがふざけてきたので 緊張が解れて 
やっと笑えた。

「じゃあ、私の代わりに あのお客様に
お茶を奢って貰って来て下さい。」

私もふざけて煌大くんに伝える。

「えぇ?! 奢りでも嫌デス…。てか、そんな事
言われてたんすか?気持ち悪いっすね…」 

煌大くんに同情されて、私は苦笑いする。

「明花…」

突然 奏真さんに呼ばれて ドキッ とする。

? 何で… 急に… 呼び捨てに…   ?

奏真さんの表情を読もうとするが…
感情を 押し殺した様な 硬い表情で
その真意は 読み取れない。

「人妻需要か? 明花ちゃん、気をつけてね?
酷い様ならあのお客さんは出禁にするから…!」

キッチンからホールに出てきたミナさんが
気遣ってくれる。

「…何ですか…。 その人妻需要って…? 」

私は初めて聞くワードに驚く。
そして そんな対象に入るらしい事にも 驚く。

「他人のモノ がよく見えるんすよ。」

煌大くんの説明は雑だが 分かり易い。
…なるほど…


「…とりあえず、今日は明花ちゃんは早めに
旦那様と一緒に帰ってね?」

ミナさんに言われて、大人しく頷く。

正直… 
あのお客さんが来た日の 帰りは 
つけ狙われていそうで 怖い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ