
孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す
第42章 花芽・1
「遥人さん」
「星名さん」
私と同時に浅木さんは言って立ち上がった。
ウエットスーツの肩に乗った長い髪から雫を垂らしながら、若い女性が立ち止まってこちらに手を振った。
「あれ?浅木さん!」
彼女はボードを抱えたまま駆け寄り、テラス席に座った私たちを見上げた。
「こんにちは」
女性は満面の笑みで私にあいさつし、浅木さんに言った。
「こんなところでお会いするなんて。今日、最近元気のない社長に気分転換してもらおうと思って誘ったんです。サーフィン。初めてらしいけど、さすが社長、すぐにコツをつかんで、波に乗っちゃいましたよ」
口ごもる浅木さんに、嬉しそうにまくしたてたあと、彼の不自然な視線に気づいて私を見やり、息を吸ってからしばらく硬直して私を見つめた。
「…奥様でいらっしゃいますか、社長の」
「ええ」
私は無理やりに笑顔を作って頷いた。
「はじめまして、秘書室の星名理央です。社長には日ごろから大変、お世話になっております」
叫ぶように言って勢いよく頭を下げた。
後ろからボードを抱いて遥人さんがやってきた。
「浅木、…黎佳?」
「社長、おはようございます」
「どうしてここに」
私は席から立ち上がり、遥人さんだけに見えるように手招きした。
怪訝そうな目つきで砂浜側の階段からテラスに上った遥人さんと、手すりの角に体を寄せて向かい合った。
「浅木さんにたのんで、あなたを追いかけてもらったの」
浅木さんの立場を守るために出まかせを言った。
「どうしてそんなことを」
「私、星名さんに会ってみたかったの」
「ならばそう言ってくれれば、ちゃんと機会を用意するのに」
「遥人さんがサーフィンなんて。本当にびっくりだわ」
「僕自身も驚いてる。こんなことさせられるなんて」
遥人さんは眉根を寄せたが、唇は無邪気にほほ笑んでいる。
「彼女といたら、楽しいはずね。私よりも」
「やめてくれよ、今こんな場所で」
「本心なのよ。責めたりはしない」
私は星名さんのもとに下り、彼女の手を取った。
「門倉を、頼みますね」
「そんな。私の方がいつも社長に迷惑ばかりかけています。本当に、社長には感謝しています」
星名さんの瞳は太陽の光を受けてきらきらしていた。
太陽が、彼女を守ってくれているみたいだった。
「星名さん」
私と同時に浅木さんは言って立ち上がった。
ウエットスーツの肩に乗った長い髪から雫を垂らしながら、若い女性が立ち止まってこちらに手を振った。
「あれ?浅木さん!」
彼女はボードを抱えたまま駆け寄り、テラス席に座った私たちを見上げた。
「こんにちは」
女性は満面の笑みで私にあいさつし、浅木さんに言った。
「こんなところでお会いするなんて。今日、最近元気のない社長に気分転換してもらおうと思って誘ったんです。サーフィン。初めてらしいけど、さすが社長、すぐにコツをつかんで、波に乗っちゃいましたよ」
口ごもる浅木さんに、嬉しそうにまくしたてたあと、彼の不自然な視線に気づいて私を見やり、息を吸ってからしばらく硬直して私を見つめた。
「…奥様でいらっしゃいますか、社長の」
「ええ」
私は無理やりに笑顔を作って頷いた。
「はじめまして、秘書室の星名理央です。社長には日ごろから大変、お世話になっております」
叫ぶように言って勢いよく頭を下げた。
後ろからボードを抱いて遥人さんがやってきた。
「浅木、…黎佳?」
「社長、おはようございます」
「どうしてここに」
私は席から立ち上がり、遥人さんだけに見えるように手招きした。
怪訝そうな目つきで砂浜側の階段からテラスに上った遥人さんと、手すりの角に体を寄せて向かい合った。
「浅木さんにたのんで、あなたを追いかけてもらったの」
浅木さんの立場を守るために出まかせを言った。
「どうしてそんなことを」
「私、星名さんに会ってみたかったの」
「ならばそう言ってくれれば、ちゃんと機会を用意するのに」
「遥人さんがサーフィンなんて。本当にびっくりだわ」
「僕自身も驚いてる。こんなことさせられるなんて」
遥人さんは眉根を寄せたが、唇は無邪気にほほ笑んでいる。
「彼女といたら、楽しいはずね。私よりも」
「やめてくれよ、今こんな場所で」
「本心なのよ。責めたりはしない」
私は星名さんのもとに下り、彼女の手を取った。
「門倉を、頼みますね」
「そんな。私の方がいつも社長に迷惑ばかりかけています。本当に、社長には感謝しています」
星名さんの瞳は太陽の光を受けてきらきらしていた。
太陽が、彼女を守ってくれているみたいだった。
