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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第45章 新居

それから私は体調のいい日は社長室に出向き、それとなく星名さんとかかわりを持つようになった。

彼女はいつも熱心に仕事に向き合っていて、明るく、前向きだった。すこしそそっかしいところもあるけれど、そこが彼女の魅力を際立たせるものになっていた。

彼女を夕食に招待した。星名さんはあくまで「部下」として、私の招待を受け入れ、我が家にやってきた。

そのころの耀は、大学生生活を謳歌してほとんど家におらず、帰宅すれば風呂に入って寝るだけ、日中家にいると思えばほとんどベッドの中、という暮しだった。

彩は女子中学校に通いながら、勉強の傍ら自分の趣味である漫画やイラスト創作に熱中していた。ゲームも好きでリビングではテレビを独占してゲームに熱中していた。

私は二人の生活に特段介入せずに傍観していた。口うるさく勉強するように言わなくても、気づけば勉強机に向かっていたし、わからないことがあれば私に相談にやってきた。

耀は星名さんの来訪にも興味を持たず、彼女を招待した日にも出かける予定を入れるありさまだったが、素直な彩は父親の秘書に会えると聞いて強い関心を示した。

私は、星名さんと彩を引き合わせたいと思っていた。彩のそばに、信頼できる大人の女性が居て欲しいと思ったのだった。


昔私の面倒を見てくれた香さんを思わせる朗らかな星名さんは、いずれ彩の支えになってくれるだろうと思った。

なぜ、そんなことを考えるようになったのか、自分でもよくわからない。

いや、当時の私は自分の本心に気づかないふりをしていた。

私にはそのころすでに分かっていたのだ。私はそう長く彩のそばにはいられないと、なぜだか不思議と強い実感があった。


星名さんはすぐに彩と打ち解けた。驚くべきことに、彼女は彩が熱中しているゲームや漫画にも詳しかった。

後からきけば彩の好みを事前に遥人さんから聞いた彼女は、話が合うように事前に漫画を読み、ゲームをプレイしたという。私はその周到さと思いやりの深さに、圧倒される思いだった。

そして同時に思った。

───彼女なら、彩を、遥人さんを任せられる

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