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孤高の帝王は純粋無垢な少女を愛し、どこまでも優しく穢す

第2章 出会い

私は急いでシャワーを浴び、ドレスルームに入った。

色別に並べて吊り下げたワイシャツの中から白のドレスシャツを選び、黒の襟付きのベストの三つ揃えのスーツを取りだす。

「白のネクタイだと完全に来賓側だな…」

54歳の私は明らかに父親には見えない。ひとり呟きながら淡いブルーのネクタイを選んだ。


スミレの部屋のあるマンションの最上階の別邸から、近くの小学校の正門へ向かう。冷たい風が、春の日差しに温められた空気をさらって吹き抜ける。

通学路の歩道には等間隔に桜の木が植えられ、校庭に面した道は舞い散る桜の花びらで白く染め上げられていた。

校門よりかなり手前の距離で私は立ち止まった。

桜の木の陰でひとりランドセルを背負った少女が立ちすくみ、入学式の看板の前で記念撮影をする親子を見ていた。

「黎佳ちゃん?」

その時風が吹き、地に落ちた花びらが舞い上がって、振り返った少女を包んだ。

桜吹雪の中で髪をなびかせる小さな彼女はまるで、鱗粉を纏って地上に降り立った桜の妖精のように見えた。



スミレが引き取った養女・黎佳は、意志の強そうな凛々しい眉と、美しい瞳が印象的な少女だった。

黎佳の両親は他界し、まだ24歳のスミレが唯一の親類だった。


緊張で身をこわばらせる孤独な少女を安心させようと、その手を取った瞬間

「彼女を俺が守る」

そう強く思った。

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