🥀Das Schloss des Todes🥀
第1章 mein Prinz
嫌な事ばかりが続いていたある日、リビングからママの悲痛な声が聞こえた。
誰かを殴る音だった。パパがママを殴っているって分かった瞬間、「助けて」っていうママの悲鳴も聞こえてきた。すぐ側に私は居たのに怖くて立ちすくんでしまった。
当時11歳、私は恐怖で動けなくなった。
私は臆病で無力な子どもだったけど、優しくて勇敢なお兄ちゃんは違った。異変に気付いたお兄ちゃんは慌てて止めに入ってくれた。その日は何とか場が治まったけど、日に日にママに対する暴力は増えていった。
完全にDVで、ママの顔は痣だらけ。見ていられなくて止めに入っていたお兄ちゃんの顔も同じく痣だらけだった。
私は2階の自室で、アンティークドールを抱えながら、大好きな「くるみ割り人形」を思い出して泣いていた。
結局、ママとパパは離婚した。私が12歳の頃だった。離婚に至るまでも色々あったんだけど、酷く生々しい話だから、そこはカット。
子供の親権もママがもぎ取った。
ママは言っていた。「私が貴方達をピアニストにもバレリーナにもしてあげる」って。
だから夢を諦めないでって。
ママは夜遅くに何処かに出掛けて明け方帰ってくる事が多くなった。
「心配しないの、お姫様。」
そう言って、ママは私の頭をよく撫でてくれた。
ママが無理をしているって事は何となく分かっていた。睡眠や食事をきちんと取っている所を殆ど見た事が無かったから。でも一切泣き言を言わないし、パパみたいに私たち兄妹を罵倒する事は無かった。