碧い雨の夜に…
第2章 【本能的に……】
「アキラ、手伝う」と私からストレッチで背中を押してあげた。
他愛もない話で溢れ返る時間帯。
私たちは静かにストレッチに集中していた。
終盤でボソッと「俺、諦めてないからな」と言われる。
聞こえないフリも出来たけど目を合わせた。
「上等だよ、入る隙ないけど」
「ハハハ、お前らしいや」
やっと笑った、全力じゃないけど少し空気が柔らかくなった。
(さすが理世)という皆の眼差しを受け、レッスン開始。
プロダンサーだけで振り付けをし、それぞれ受け持つ生徒たちの大会に向けてプログラムを組んでいく。
私とアキラは上級者コースを受け持っているから同じフロアになるのだ。
曲から全部考案する。
それをダンサー仲間同士で見せ合う。
ダンスとなれば誰より気が合うのはアキラで、同じ波長の中で踊れるのは気持ち良い。
俺にしか出来ないことで理世を振り向かせる、とか言ってたみたいね。
元気出たなら良かったけど。
アキラにヘコまれるとやりにくくて仕方ない。
ヘコませてるのは私か。
だって仕方ないじゃん、ナオが一番なんだから。
ピカピカのフロア内でキレの良いダンスを踊るとシューズがキュッキュッて鳴る感じが好き。
一寸の乱れもなく息を合わせて踊るピリっとした空気感。
サブでついてくれるダンサーたちとも一緒に合わせてフォーメーションの確認。
魅せ方ひとつで何もかも変わってくる。
休憩タイムでタオルとお水を渡してくれるアキラも隣に座り込む。
あーだこーだ振り付けの話をして動画のチェック。
こうなってくると、周りによく言われるのは2人の世界観が完成していて割って入れないらしい。
5分の休憩でまた踊りながら考案していく私たちは最強にストイック過ぎてついてこれなくなるみたいだ。
一旦その域に入ると没頭してしまうから。
ハッとして「まだ休憩してて良いよ」と言ってあげる。
私の受け持つ生徒から3名、アキラのところからも3名で計6名でチームを組んでダンス大会に出場する。
まずは地区予選突破を目指すのだ。
これからそのことでアキラと打ち合わせも多くなる。
生徒へのダンスレッスンも終わって携帯を確認すると(20時頃に行くね)とナオからメッセージが入っていた。
生徒たちも帰っていった後だし、気を遣ってのことだろう。