碧い雨の夜に…
第1章 【衝動的に……】
「今はお前と話してんじゃん?何でナミちゃん?」
たまに見せてくる本気の低い声。
裏の顔…とでも言おうか。
私は密かにコレをブラックアキラと呼んでいる。
素のアキラだよ。
こっちの方が腹割って話せるけどね。
「まぁ、私はいつもの如く無理なんで」
「マージーかーよ!俺の女失格だろ」
「だから付き合った覚えないんだってば、皆居ないのにまだ続ける気?」
信号が青になり走り出す。
何かボソボソっと言った気がしたけど聞こえなかった。
目的地に着いて「ありがとう」とヘルメットを返す。
受け取ってくれたと思ったのに手首ごと引っ張られ至近距離で顔を上げる。
間にヘルメットがあったから良かったものの、片手で抱き締める仕草。
「え、なに?」
「ん?頑張ってって意味」
髪の毛も耳に掛けられた。
普通に距離感おかしい時があるんだよね、アキラって。
「帰り、気をつけてね」
「理世こそ、な」
グータッチ見せてきたから応えようとしたらまた手首ごと引っ張られてぶつかりそうになった。
「ねぇ!」と怒ったフリしたら「目に焼き付けてんの、今日もう理世に会えないから、1秒でも長く見てたいから」って素で言えちゃう鋼タイプな男。
「本当、恥ずかしげもなくよく言えるね」と笑うのがいけないのかな。
もうよくわかんない。
人生で一番告白受けて断ってる相手だからね。
「笑って、理世の笑顔元気出るから」
「言う相手間違ってるから、アハハ」
「ねぇ、理世、あの約束覚えてる?」
何度も繰り返し思い出されたことで覚えてしまったある約束。
「うん、覚えてるよ、私とアキラが40歳になってお互いフリーだったら付き合おうでしょ?」
「違う、結婚しよう、だよ」
「あ〜ハイハイ、そうだったね」
「絶対、だからな?」
「うん、もう時間だから行くね?送ってくれてありがと、バイバイ」
手を振って後退り。
エンジンふかして帰って行きました。
今、25歳だよ!?
あと15年………全然フリーな気がする。
結婚願望なんて皆無だし、ダンスのことしか頭にない女だよ。
最悪、海外に逃亡しちゃうか。
さすがに追い掛けては来ないでしょ。