碧い雨の夜に…
第1章 【衝動的に……】
40歳になろうが、50歳になろうが、私は全くアキラと一緒に暮らしたりする画が思い浮かばない。
きっと私、結婚不適合者なんだと思う。
いや、その前に恋愛不適合者だ。
思ってた以上に打ち合わせが長引いてすっかり遅くなってしまった。
スタッフさんにディナーまでご馳走になっちゃってお礼を言ってタクシーまで手配してくれた。
外は雨。
そういや朝の天気予報で夕方から雨が降るって言ってたな。
当たってんじゃん。
小雨だったしマンション前に停めてもらって走ればあまり掛からないだろうって思ってた。
ドアが開いてダッシュ。
エントランスを駆け抜け屋根のある入口まで行こうとしたけど、すぐに目に入った影。
植え込みに座って木にもたれてる人が居る。
(え…?なに…?人…!?寝てる…!?)
辺りを見渡しても誰も居ない。
傘もないから濡れてる。
髪の長い女の子。
綺麗な顔つきしてる。
黒のワンピースにお洒落なブラウス。
華奢な腕が透けてきている。
「お姉さん大丈夫?」
思わず声を掛けていた。
応答なし。
死んでないよね?
呼吸を確認すると息はしていた。
ホッとしたけどこのままにしておくのはどうしても出来なかった。
少し触れて起こしてみる。
酔っ払いでもなさそう。
小さなカバンあるけど勝手に中見るのは違う気がして。
「お姉さんお姉さん、此処寒いし雨で濡れるからお家帰った方が良いよ?起きて?」
身体はやっぱり冷たくなってる。
いつから此処に居たんだろう。
風邪ひいちゃうよ、と肩をトントンしたら頭がグラッと後ろに倒れそうになったのを間一髪で支えた。
私の腕の中でスヤスヤと眠る彼女は、不謹慎にもとても綺麗だと思った。
荷物はこの小さなバックだけらしい。
腕の下に頭を潜らせ抱えて連れて帰る決心をした。
脈もあるし、さっきからずっと寝息立ててるし悪いところはなさそう。
ただ見捨てられなかっただけ。
そう自分に言い訳して、生まれて初めて知らない女の子をお持ち帰りした。
いや、これは人助けだ。
女の子だし良いよね。
男の子だったら警察とか呼んで保護してもらうけど女の子なら人には言えない何か理由があるんだろう。