碧い雨の夜に…
第1章 【衝動的に……】
にしても、女が女を担いで運ぶというのは重労働。
普段鍛えてるし体幹は人一倍ある方なんだけど家に着く頃には息が上がっていた。
とにかくずぶ濡れなのでタオルと着替えを用意する。
拭いている途中で息を吹き返したのか突然身体がビクッと反射して飛び起きたのだ。
慌てて事情を説明する。
怪しい者じゃないことを必死に伝えて。
ようやく状況を理解したのか、涙ぐみながら「ありがとうございます」と声を詰まらせた。
テンパって身分証なんて見せてさ、ウケるよね。
「まぁ、事情はあるんだろうけどあんなところで寝てたら誰かに襲われちゃうかも知れないし危ないよ?野垂れ死なれたら困るから私の家に避難させました、とにかく風邪引いちゃうからお風呂入っちゃってください」
「そ、そんな……悪いです、すみません」
「良いから入って温まってきて、話はそれから」
強引にもバスルームへ連れていき使い方をレクチャーして彼女を一人にした。
何度も謝られたけど寒さで声も身体も震えてた。
そんなにまでなってる子、放っておけないから。
人として、当たり前なことしてるだけ。
10分ほどして上がってきた。
(え…早っ)と思って顔を上げたら携帯を持ったまま固まってしまったのは私。
すっぴんになっていた彼女は更に綺麗だった。
雰囲気もまた違う。
髪がまだ濡れているからか、妙に色っぽくて目を離せずにいた。
「あ……髪乾かさなきゃね」とドライヤーを用意し、謙遜されたがソファーに座らせて乾かしてあげた。
髪も細くて艶があって綺麗。
肌も白く、透明感半端ない。
鼻筋通ってて睫毛長い。
くっきり二重瞼の大きな瞳は下を向いているけど左右対称でどれだけ整ってるんだよって顔してる。
身長も私(161センチ)より高かったから170センチは余裕で越えてるよね……?
でも華奢だから私の服もすんなり入ってる。
ドライヤーを終えてとかしてあげたらいざ本題。
「で、何ちゃんなのか聞いても良い?お名前」
目線を合わせて話を聞く。
やっとちゃんと目が合った気がするけど、吸い込まれそう。
「あの……迷惑かけてすみません、私は……ナオ、です」
フルネームで言わないのは理由があるんだろう。
ポンポンと頭を撫でて了承した。