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碧い雨の夜に…

第1章 【衝動的に……】






温かい紅茶を淹れて
「とりあえず今夜はもう遅いし此処で良いなら泊まってって」と伝えた後に自分もシャワーを浴びた。




一人にして静かになるとまた声を押し殺して泣いていたのは気付いてた。
悲しいことがあったんだな。
理由はどうであれ、あの子を一人にしてはいけないと思った夜だった。




「あの、お手洗い借りても良いですか」




「あ、どうぞ」




ついでに他の場所とかも教えると困った顔をして私を見る。




「あ、もしかして生理?あるよ、ナプキン……あ、タンポン派?」




「そ、そうじゃなくて…!あの……私もお名前聞いても良いですか?」




嘘だろ、自分。
まさかの、名乗り忘れ。
こっちは早くも聞くだけ聞いておいて、自分は言わないなんて。
プハッと思わず笑ってしまった。




「あ〜ごめんごめん、私は理世、笹本理世です」




「リセさん、本当に何から何までありがとうございます……ちなみに、生理ではありません」




「そっか、トイレ行ってきてください」




どうぞどうぞ、とジェスチャーし見送る。
ダメだ、笑いが止まんないよ。
あれ、身分証見せたのにな。
それどころじゃなかったか。




少し落ち着きを戻したか、ポツリポツリ…ではあるが話をしてくれた。




「歳は……23歳です、Nao名義でモデルをしていて……」




最近大好きなお婆ちゃんが亡くなったらしく、見送った後の喪失感にへたり込んでパニック発作を起こし気付けばあそこで気を失っていたみたい。
話しながら大粒の涙が頬を伝う。
ゆっくり背中を擦って耳を傾けた。




「ごめんなさい……本当、助かりました」




「ん………居たいだけ居てくれて良いからね、何か放っておけないもん、ごめんね、ただの世話焼きで」




首を振ってまたお礼を言われる。
その華奢な身体と心でよく受け止めたね、余程大好きだったんだな、お婆ちゃんのこと。
うちの場合は物心がついた頃からもうすでに祖父も祖母も居なかったから。
父親も居ない。




「私はね、25歳のしがないダンサーしてる」




「え、ダンサー?凄い、格好良いです」




「楽しいからそれ職業にしちゃったやつ」




「好きなこと職業に出来るって憧れる」




「好きでやってないの?モデル」









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