Biastophilia💋
第1章 Biastophilia
扉の開閉音の後に、慎重に私の部屋に入ってくる足音が、眠りに落ちそうだった私の耳に入ってきた。
暗闇の中、4LDKの部屋を1つ1つ見て私の寝室場所を確認しているような動きだった。
ついに寝室を突き止められて、扉がゆっくり開いていく。
名前も顔も知らない、正体不明のストーカーを自分の領域に招き入れた事に、酷く興奮していたが、私は寝たフリをしていた。
気配を消して、仰向けで眼を閉じている私の布団を捲る音が聞こえた。
私の唇に、ストーカーの唇を押し付けられたような感触があった。
その瞬間、ガバッと起き上がってしまいたかったんだんだけど、この状況をもう少し楽しみたいという欲求に負けて、行動には移さなかった。
でもその時、行動に移せば良かったって後で後悔した。
不法侵入者に唇を許した私は、その後レイプされるものだと思い込んでいたけど、彼がした事は錠剤を飲ませる事だった。
恐らく強力な睡眠薬、精神安定剤の類いのものだろう。
水で流し込まれて程なくして、眠気が襲ってきた。
睡眠姦か。
なーんだ。
私、相手の顔も見れずに犯されちゃうの...か。
豆電球を付けたオレンジ色の室内、
私の上に跨って服のボタンを器用に外す謎の男の姿がボンヤリと見えるだけの視界を完全に閉ざす為に、少々ガッカリした気持ちで私はゆっくり瞼を閉じた。