秒針と時針のように
第2章 顔を見た瞬間からの嫌な予感
ダメ。
ダメダメ。
-あんたなんかいらないのよ-
ばっと手を払う。
爪を立てるようにして。
呆然と拓が手をあげたまま固まる。
「し、のぶ?」
「あっ……なにしてんの」
「驚かそうと思って」
「そう」
なんだ。
変な空気。
すっきりしない。
キーンコーンカーンコーン……
二人で斜面の下を見る。
「今の一時間目のチャイムだっけ」
「たぶん」
「うわー。忍悪い子だ」
「はぁ? 拓もだろ」
「オレ付いてきただけだし」
「はいはい」
「どこいくの」
「今日休む」
「いけないんだー」
うるせ、と口だけで呟く。
登り始めた脚を掴まれた。
がくんとそのまま崩れる。
ズシャアと派手な音を立てて落ち葉の中に折り重なるように倒れた。
顔を起こし、ついた泥を払う。
それからゆっくり振り返った。
「てめぇ……バカじゃねーの」
「だって忍が行っちゃうから」
脚を掴んだ理由になるかソレ。
拓は葉っぱまみれの頭をぶんぶん振って、にいっと笑ってみせた。
「オレもいけない子になる」
立ち上がった拓が俺を抜かして登り始める。
「はあ?」
「てっぺんまで競争っ。れでぃー……ごー!」
最近クラスメイトがよく使う。
れでぃーごー。
見る間に拓は走って行く。
足が痛い。
それでもなんとか立ってみた。
「……ムカつく」
半袖を肩まで捲る。
慣れた道を探して本気で走った。