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それこらというもの、同じ屋根の下で暮らす家族の雰囲気は、ぎこちないものとなった。おそらく今まで通り過ごしているのは、親父だけだった。

ある日の夕食、最近雰囲気が悪いのを感じてか、率先して親父が話しかけるようになっていた。

特に優香が以前のように積極的に話さなくなった分、親父と沙耶がよく話すようになっていた。

「沙耶ちゃんどうだ？勉強の方は…。解らなかったらいつでも言うんだぞ！まだ中学生くらいの勉強なら私も教えることができるしね！」

と親父が言うと、

「うん！お父さんの教え方上手だからよく分かって好き！」

と言った。沙耶も俺や優香と話さないので、必然的に親父と話すことになる。

俺と優香は、沙耶への罪悪感から口数は少なく、家庭内での沙耶の発言権は増していた。食事の後沙耶は、

「私片付けしてからお父さんに勉強教えてもらうから、お母さんか直くんお風呂先に入って良いよ！」

と言った。優香は、

「そう？じゃー、そうさせてもらうわ！直くんどうする？」

と、俺に聞いた。今では優香も俺のことを直くんと呼び、俺は優香さんと呼ぶようになったが、その事については親父や沙耶は何も言わなかった。

沙耶は、優香があれこれ俺の世話をするようになっていることが気に入らないのか、

「どうせなら一緒に入っちゃえば？」

と低い声でボソッと嫌味を言った。それを聞いた親父は、

「おいおい、沙耶ちゃん！」

とだけ言い、俺は、そのことには触れず、

「俺先に入っていい？」

と優香に聞き、優香も

「良いわよ！先に入って！」

と言った。沙耶は、少し不機嫌な態度で食器を片付けだし、優香も片付けだすと、沙耶は、

「お母さんはいいわよ！お父さんに手伝ってもらって私がやるから…！」

と言い、親父は、

「俺が手伝うの？」

と沙耶に聞くと、沙耶は、

「お父さん優しいから好きよ！」

と言い、親父は、

「よし、手伝うか！」

と言い、優香は、

「そう？じゃー頼むわね！」

と、少し不機嫌そうに言い、それから俺の方をチラッと見てからダイニングキッチンを出て行くために歩き出した。