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もうLOVEっ! ハニー!

第7章 彼女の横顔

 林の方に陽が沈み、薄暗くなってきたころ、華海都サークルが揃って一つの台を囲んでいた。
 二百個のコロッケの山を前にして。
「今年の参加者は六人なのねー」
 鳴海が携帯カメラでパシャパシャ撮っている。
 私も撮りましょう。
 こんな光景初めて見ましたし。
 いくらぐらいしたのかなる先生に聞いたところ、隆人さんの知り合いから一個十円で買ってきたとのことでした。
 これだけの量で二千円。
 すげーです。
「おい、隆にい。心の性別で参加してる奴いるけど」
「誰のことかにゃ」
「美弥もよおやるわ……」
 岳斗が呆れがちに笑う。
「まあまあ。勝てば官軍て言うじゃん?」
「意味がちげーし」
 二百個を六人と云いますと、大体一人当たり三十個。
 やべーです。
 初参加のつばるの隣をこばるが心配そうに立っていた。
「無理すんなよ? お前オレより小食なんだからよ」
「いつの話してんの、兄貴」
 自信満々ですね。
 見学組は焼きマシュマロを頬張りながらその光景を眺める。
「マリケンすげぇから。見てるといいよ」
 尚哉が指差した先で、見たことない笑顔のマリケンがいた。
「先輩は出ないんですか?」
「……俺が出るように見える?」
 それは身長的な話でしょうか。
「いえ、見えませんが」
「はっきり言うね」
 きつね色のマシュマロを齧り、唇を舐める。
 見とれてしまいますね。
 グレイの髪に、傍らの火を反射してオレンジを揺らす眼鏡。
 ヴィジュアル系と言われるのはよくわかります。
「今更だけどさ」
「はい?」
 尚哉が目線を泳がせながら言う。
「なんて呼べばいい?」
「え?」
 そういえば、尚哉先輩には余り名前で呼ばれたことがありませんでした。
「え、えと……お好きに」
「それが困るから訊いてんの」
「あう……先輩方は普通に呼び捨てですよ?」
 首をかりかりと掻いて、尚哉はぎこちなく私を見た。
「……かんな?」
「はいっ」
 ふいっと視線を逸らされる。
「始まるよ」
 丁度、隆人が開始の笛を鳴らすところだった。
 本当にテレビで見る大食い選手権のように並んで、タイムウォッチも用意して。
 時間測定は鳴海の役目のようで、足を組んで電子板のそばに座っている。
 一斉にコロッケに全員が手を伸ばし、かぶりつく。
「わ……みなさん早い」
「馬鹿っぽいけどな」
 

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