もうLOVEっ! ハニー!
第14章 思惑シャッフル
今日は緊張する時間が長すぎます。
肩も、頭も、腰も痛いです。
戻ってきた隆人はつばるのいた向かいの席に腰かけて、あまりに優しい笑みを浮かべた。
「お疲れ様。よく耐えきったね。とても辛い時間を同席してもらってごめんね」
ぶわわっと。
涙ではなくなんとも言葉に表しがたい温かい波が身体を包む。
遅れて出てきた涙と鼻水に焦って袖で拭う。
隆人はどうぞ、とボックスティッシュを差し出した。
「ありがとうね。本当は、辛い思いをさせることなく解決したかったんだけど。当人がいない場所で結論を出すのは良くないし、かんなもあの二人がどうなるか知りたいと思って。でも謝罪の強要までは深入りしすぎた。申し訳ない」
頭を深く下げる隆人に急いで両手を振る。
「や、やめてください。隆人さんが居なかったら何も前に進みませんでした。お礼を言うのは私の方です……あと本当に巻き込んですみません」
つばると同じことを言ってしまった。
その事実に頬がピクピクしてしまう。
隆人は手を組んで前かがみになる。
真っ直ぐこちらを見て、優しい声で続けた。
「正直、つばるに関しては最適解とは思っていない。例えば、もしかんなが僕の親族だとしたら、こんな結末は怒り狂って止めるかもしれない。でも入寮してからの君たちを見ていて、脆いけれど確かに関係性を構築しようと努力しているのが見て取れて……それを無かったことにするような決断はどうしても出来なかった」
最適解。
それはどれなんでしょう。
私にもわかりません。
入寮一日目だったら、村山薫と同じ末路を辿ってもらわないと気が済まなかったことでしょう。
そこから何が変わったのか、言語化はできませんが、そんな乾いた関係ではなくて。
なんとも不思議な縁に変化していて。
いなくなることを考えると、寂しいと似た微かな感情も湧いてしまって。
バカんなですね。
本当に呆れます。
三年間の冷たい仕打ちが三ヶ月で回復するなんて、有り得ないはずなのに。
「前の部屋は空き部屋になるから、また部屋リストを更新しないとね。薫の部屋も空き部屋に戻るね。三階は司と清瀧か。あの二人なら感情的だけでなく上手くやるんじゃないかな」
それはそれは、濃い面々ですね。
告白の返事を思い出して顔が熱くなる。
「じゃあ、かんなも部屋に戻ろうか」
よろめきながら、立ち上がった。