もうLOVEっ! ハニー!
第19章 友情の殻を破らせて
ノックの音に亜季が飛ぶように玄関に向かう。
「いらっしゃい! ルカ」
「入るよ」
目線が合ってから、気遣う表情に全てを悟る。
そうか。
亜季は僕を利用したか。
スタスタと目の前に来たルカが、凛とした声で尋ねる。
「何かあったの」
くく、と嗤いが漏れてしまう。
ルカの怪訝な顔がさらにおかしい。
「後で話すよ。今日は楽しかった?」
「うん! いい写真がたくさん撮れた。二人にも見て欲しくて」
そうだね。
ルカが現れるだけで華やぐ空間。
君は魅力的だよ。
亜季のベッドに三人並んで腰掛けて。
ルカのスマホを覗き込む。
「初めてポーズをとったにしては、サマになっているでしょ」
「やだあ。ガク先輩スタイル良すぎなんだけどお」
繕っていても、目は笑ってないね。
気づかぬルカは、もう一枚も披露する。
「ルカは可能性感じたわけですね」
「うん。良い。二人の意見も聞きたい。これを見たら憧れると思う?」
「痒い痒い! ルカなら慣れてるけど、先輩の批評はつらいよお」
「奈己はどう」
「無視しないでよう」
「そこらの名前も知らないモデルよりは見れますよね」
「そうそう。そうなの」
「二人で会話しないでよう」
早く話題を終わらせたいくせに。
まだ話したそうなルカの表情に青ざめながら。
「プロが撮るのが楽しみ」
「ルカのスタジオに行けるのズルすぎなんだけど」
「いつかランウェイに出るときは招待するから」
「絶対だよ! 絶対がいい! 約束よ!」
思わぬ約束に舞い上がって。
単純な反応が可愛い。
きっと卒業後になるから。
絆を持っておきたいから。
ああ、苛立ちを通り越して笑いしか出てこない。
「ぬるくなる前にこれ食べよお」
杏仁豆腐を配って、それぞれスプーンで少しずつ食べる。
「ゲームはどれをやる予定なの」
「ルカが苦手な犯人当てのやつ」
「勝ったことないくせに」
「あるもんねえ」
ルカ相手だと、からかわれても幸せそう。
配られたカードをじっと睨みながら、唇を突き出してる。
「じゃあ、じゃんけん」
最初になったルカが手札を場に一枚出しながら、神妙な声で言った。
「楽しいけど、軽い気持ちで人の人生に影響は与えたくないよね」
「ガク先輩の話ぃ?」
「なんでも、かな」
すでに君は与えているのに。
こっぴどく振ったとしても、変わらない人間を一人作って。