もうLOVEっ! ハニー!
第20章 秘密のシャーベット
つばるの病室を後にして、清の部屋に行こうか悩んでエレベーターホールのソファの上。
岳斗は今しがた聞いた情報をどう処理しようか、結論を出せずにいた。
司に話しに行くのは、週明け月曜放課後にしよう。
別に全てを掘り起こす必要は無い。
ただ、あれほど楽しそうに汐里と厨房に立っていた司が見れなくなるのは悲しすぎるから。
友情を優先したい訳では無い。
つばるの意外そうな顔が過ぎる。
かんなのことを聞かないのかと。
そんなにヒントを出さんでくれ。
やっと笑ってキスができるようになったんやから。
独占と嫉妬ほど邪魔なものは無い。
傷つけるだけなら掘り起こす必要も無い。
けれど臆病と紙一重。
向き合わないんは余裕が無いから?
溜息を吐いて受付フロアに降りる。
曇り空の下ヘルメットを被り、バイクを走らせた。
風が思考を吹き飛ばしていく。
このままどこか遠くへと。
実現には至らぬ思いが浮かぶ。
追い越していく車を見つめて、流れから外れぬようにと速度を調整する。
一年の時に取った免許のお陰で、朝の散歩よりも頭をクリアにしてくれる時間が持てる。
服とバイクに消えたバイト代も、この時間のためなら有意義だ。
学園につき、玄関の内線からかんなを呼ぶ。
笑顔で現れた彼女に頬が緩む。
ヘルメットで乱れた髪を急いで直しつつ、かんなの手を握った。
「ルカ先輩から結果連絡来ましたか」
「来たら言うから。今は何借りるか決めよ」
歩幅を合わせて、穏やかに。
バイクの後ろに乗せた方が早いけど、会話しながら向かう方が今は尊い。
「そうですね……あの、有名な恐竜映画とか」
「あらすじ説明するからワールドから観よか」
「あとアメリカンヒーローのシリーズですね」
「たぶん全部見終わる頃にはクリスマスやね」
「うわあ、そんなに長いシリーズなんですか」
「保証できる面白さやから、すぐ見終わるて」
足音二人分。
あと半年もしたら、思い出すであろう時間。
信号を渡りつつ、手を離して肩に添えて、人にぶつからぬように抱き寄せる。
ちらりとこちらを見上げる笑顔に、温かい液体が指先まで満ちていく。
「クリスマス前には旅行も楽しみですね」
「採点バイトキツなかった?」
「私向いてるかも。結構稼げました」
「なら良かった」
楽しい予定がもう、変更にならんといいな。