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もうLOVEっ! ハニー!

第20章 秘密のシャーベット


 シャワー室から出て、階段を上ると、亜季が部屋から出てきた。
 これからシャワーなのか、着替えを抱えている。
「あ、おっかえりぃ。ルカ」
「ただいま」
 ふわあっと広がる笑顔に、つい胸が締め付けられる。
 全身から放たれる好意というのは、時に重みを持ってのしかかる。
 話したいという表情に、つい足を止める。
「どうだった? 撮影」
「楽しかった。本当にいい撮影だったの」
「羨ましいなあ。先輩に惚れたりしてないよね」
「するわけない」
 ああ、まったく。
 あの現場を知らないから言うのだ。
 邪な感情なんてくだらない。
 人間の可能性に魅入る時間なのに。
 しかし亜季の目は疑念に淀む。
「ねえ。これからも一緒に撮影行っちゃうの」
「ええ、仕事としてね」
 きっと二位通過するだろうから。
 小脇の反応からしても、六番が一位だろう。
 それでも、十分凄い。
「亜季、前にも言ったけど今の私は恋愛に興味が無いの。それこそ一ミリもね。だからさっきみたいな質問は冗談でもやめて」
「わかったよ。恋バナしたいだけじゃなーい?」
 調子のいい声に戻った亜季に苦笑する。
「今度のレンレンはアンナとの特集なの。親友の亜季は買ってくれるかしら」
「当たり前じゃんね。奈己と本屋巡るよ」
 名前を呼ばれたのが聞こえたのか、白い髪を揺らして顔を覗かせた。
「亜季、まだシャワー浴びてないの。僕もそろそろ行きたいんだけど」
「ねえ、奈己! ルカが見たことないくらい楽しそうなんだけどお! 嫉妬しちゃうよねえ」
「いつものことでしょう」
「なんだとう!」
 あしらわれた亜季が頬をふくらませて階段に向かう。
 それを見送ってから奈己も着替えを持って出てきた。
「ルカ」
 部屋に向けた足を止めて振り返る。
 奈己は廊下の真ん中に立ち、両目がまっすぐにこちらを射抜いていた。
「なに、奈己」
 その目つきは、まるで、敵に向けるような。
 冷たくて、鋭くて。
 次の奈己の言葉を待つ耳に悪寒が走る。
「僕は半分我慢しました。もう限界です」
 その真意の全貌は掴めなくとも、亜希のことを言っているのだけはわかった。
「この友情が壊れても構わないと思ってる」
 ああ、本気だ。
 きっと今を待っていたわけじゃないだろうに。
 二人きりの今だからこそ出た宣言。
「私は流れに任せるよ」
 脊髄反射で出た言葉。

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