もうLOVEっ! ハニー!
第20章 秘密のシャーベット
シャワー室で水音を聞きながら、服を脱いで籠にしまう。
使われているのは四つのうち二つ。
そのどちらかが亜季だろう。
奈己は二つに挟まれた真ん中の個室に入った。
お湯になるまでシャワーを壁にかけ、それから足元から流していく。
ルカに放った言葉を、亜季は知らない。
しかし明日から三人の関係性は変わるだろう。
おかしいな、と自嘲する。
我慢は強い方なのに。
ルカが楽しそうにすればするほど、醜く嫉妬をする亜季を見るのが耐えきれなくて。
左の個室が開いたので、そっと扉の隙間からその背中を確認する。
金髪、こばるか。
更衣室の扉が閉まってから、奈己はシャワーを出しっぱなしにしたまま、右の個室を開けた。
ビクッと跳ねて、シャンプーを泡立てていた手が止まると、亜季が目を丸くして振り返った。
「なにしてっ」
言い終える前に亜季を壁に押し付けて扉を閉める。
蛇口を捻って頭上からシャワーを降らせると、顔を両手で覆った。
「ちょっ、目に入るから!」
その手をどかして、濡れた唇に口づける。
くぐもった声を封じるように舌を絡ませた。
泡でヌメつく髪ごと頭をつかみ、離れぬように抱き寄せる。
互いの胸板がピタリと合わさり、亜季が下がろうと足をばたつかせる。
「まっ、待って! 奈己、やめろって」
なんとか離れて、亜季がシャワーを止めた。
顔を拭って、口を手で覆うと、震える声で続けた。
「なんで……?」
「ルカに宣戦布告してきました」
「は?」
わかりやすくハテナを浮かばせて。
亜季の頬に手を添えると、ゾワっとしたのか首をすくませて、怯えたように見上げてくる。
可愛い。
「本気で嫌なら拒否してね」
隣の個室で出しっぱなしの水音が響く中、再度唇を重ねた。
熱が込み上げそうなのをなんとか抑えて、亜季の頭を優しく撫でる。
「んん、ちょ、待って……ルカになんて言ったんだよ」
何を心配しているんだろう。
あの歪な時間を守るためだろうか。
親指で亜季の唇をなぞりながら、そっと告げる。
「好き勝手やらせてもらうって伝えたよ」
「それ、って……おれのこと?」
「他に誰かいる?」
「いや、ごめん、でも……おれはルカのこと諦めたりしないよ?」
「知ってる」
訳が分からないと眉をひそめる。
「僕も諦めが悪いからね」
知ってるだろ。