
幸せな報復
第24章 幸せな報復
自らの力を知らない彼は、いつも自分を過小評価していた。彼ら狼男はかつて人間に恐れられ忌み嫌われた。狼男として生きていた勘太郎は、人間になりたかった。人間として生きようと、狼族から逃げた。
そんな思いを抱いた父親から育てられた子どもなのだから、狼男としての習性、格闘方法、狩猟方法などは一切勘太郎から教えられなかった。彼の肉体を鍛えなかったぶん、その才能は知性へと向けられ人並み以上に磨かれていった。
そんな経緯があったからか、彼はよちよち歩きを始めたころから、その姿を見た近所の人々は彼を神童と呼ぶほど頭脳明晰な子どもとして認識されていった。
本人に自覚はなくとも、その超能力は無意識のうちに周囲へ影響を及ぼしていた。
夫婦は、自分たちの正体を浩志には一切明かさなかった。
彼らにとって自分たちの種族は誇りに思えなかった。人間を襲い、子を残すことで命をつないできた過去を、心から忌み嫌っていた。
「俺たちも、いつか人間みたいに普通の家族を作りたい……」
彼らの悲願は人間のような生殖機能を勝ち取ることだった。
仁美はけだもの族に女しか生まれないことを知っていた。勘太郎は狼男族に属し、男しか生まれない種族であることを知っていた。仁美は初めて男子を産んだ。
新たな種族が、この世に誕生した。その輝かしい種の始まりが浩志だ。
「私たちの子は……人間界で普通の子として育ってほしい」
仁美がつぶやく。
勘太郎は静かにうなずいた。
「ああ。俺たちみたいな思いだけは、絶対にさせない」
そんな思いを抱いた父親から育てられた子どもなのだから、狼男としての習性、格闘方法、狩猟方法などは一切勘太郎から教えられなかった。彼の肉体を鍛えなかったぶん、その才能は知性へと向けられ人並み以上に磨かれていった。
そんな経緯があったからか、彼はよちよち歩きを始めたころから、その姿を見た近所の人々は彼を神童と呼ぶほど頭脳明晰な子どもとして認識されていった。
本人に自覚はなくとも、その超能力は無意識のうちに周囲へ影響を及ぼしていた。
夫婦は、自分たちの正体を浩志には一切明かさなかった。
彼らにとって自分たちの種族は誇りに思えなかった。人間を襲い、子を残すことで命をつないできた過去を、心から忌み嫌っていた。
「俺たちも、いつか人間みたいに普通の家族を作りたい……」
彼らの悲願は人間のような生殖機能を勝ち取ることだった。
仁美はけだもの族に女しか生まれないことを知っていた。勘太郎は狼男族に属し、男しか生まれない種族であることを知っていた。仁美は初めて男子を産んだ。
新たな種族が、この世に誕生した。その輝かしい種の始まりが浩志だ。
「私たちの子は……人間界で普通の子として育ってほしい」
仁美がつぶやく。
勘太郎は静かにうなずいた。
「ああ。俺たちみたいな思いだけは、絶対にさせない」

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