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幸せな報復

第24章 幸せな報復 



 そして迎えた卒業式。

「恵美さん。僕と結婚してください」

 浩志は、恵美に正式にプロポーズした。

 ――と、言えば聞こえはいい。

 だが実のところ、大学在学中から、浩志が恵美を意識するように仕向けていたのは、エルザだった。

 もちろん、その事実を恵美自身は知らない。

「ねえ、エルザ。浩志くんのこと……どう思ってるの?」

 そんな問いを、恵美が口にしたことは一度もない。

 なぜなら、自分の中にエルザという別の人格が存在していることさえ、彼女にははっきりと自覚できていなかったからだ。

 入学式の日、浩志を最初に気に入ったのは恵美だったのか。
 それとも、エルザだったのか。

 もはや、そんなことはどうでもよかった。

 エルザが浩志に近づくよう恵美の背中を押したのか。

 それとも――。

 恵美自身が浩志を気に入ったものの、男性に対して積極的になれない自分に代わって、エルザに行動させたのか。

 どちらが始まりだったのか、今となっては誰にも分からない。

 ただ一つ確かなことがある。

 恵美も、エルザも――いつの間にか、浩志のことを好きになっていた。

 二人の想いは、もうどこからどこまでが自分のものなのか、区別できないほど重なっていた。

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