もう無理、抜いて、イかないで出さないで
第5章 【配属先は社員全員、取引先と性接待する部署でした】
「家の前まで送らなくて大丈夫かね?」
「はい、この辺で大丈夫です、ありがとうございました」
最寄り駅から歩いて帰ります。
家に帰ると夫はお風呂も終えていてソファーに寛ぎビールを飲んでいました。
テーブルの上にはお菓子やおつまみが散らかっている。
脱いだ靴下もそのまま。
ジャージ上下でみすぼらしい格好だ。
「おかえり〜」とお尻を掻いている。
「ただいま、今日ご飯作れなくてごめんね」
笑顔で言うのも慣れてきた。
こんなことくらいで今の状況を手放すつもりはない。
あなたは黙って寝取られる妻を何も知らぬまま変わらず夫として過ごしてくれれば良いの。
セックスなんてしなくて良い。
死ぬまで私を扶養すれば良いのよ。
「たまになら良いけど、やっぱりちゃんと温かいご飯食べたいな」
「うん、頑張って残業しなくて良いようにしてもらうね?今日のは私のミスだったから仕方なくて」
嘘も方便で上手くなったものだ。
何の疑いもなく信じてくれている。
「要領良い方だからそのうち会社がキミを手放さなくなるんじゃない?」
「だと良いけど」
社内恋愛だったから私が働いていた姿を知っている夫は勇気付けようとして言ってくれた。
先に転職した私を忘れられなくて半年後に急に呼び出されプロポーズされたんだっけ。
「子供が欲しい」と言う私の願いもすぐに聞いてくれて妊活に入った。
仕事も辞めてストレスから解放されたと思っていたのに全然出来なくてそれがストレスになり諦めた。
結局、原因はあなただったけど、私は未だにこの事実を夫に打ち明けてはいない。
赤ちゃん……諦めてないって言ったらどうする?
随分時間もお金もかけたよね。
もう終わったって思ってるでしょ?
義務的に出さなくて良いって。
知ってるんだよ、性欲なくなった訳じゃないよね?
どうやって発散してるの?
後輩の子に頼んでヤらせてもらってる?
上手く誤魔化せてるって安心しきっちゃってるのかな?
私が再就職するの応援してくれたのも自分の時間が持てるからだよね?
外で働いてる嫁の時間管理を把握して、自分も良い想いしちゃってるんだもんね?
良いよ、見過ごしてあげる。
知らないフリして良き妻を演じてあげるね。