もう無理、抜いて、イかないで出さないで
第7章 【管理人さんに家賃を身体で払っていたら他の住人たちが…】
田舎から上京して、憧れの都会暮らし……とはいかず、結局その日暮らしするのに精一杯で、すでに人付き合いに疲れた私はバイトも片っ端から面接で落とされた。
貯金も底をつき、とうとう家賃も払えず滞納してしまった。
実家には頼れず夜のバイトも怖くて出来ない。
第一、私なんかにお金を落としてくれる人も居ないだろう。
でも、変わりたい。
変わらなければ。
内気な性格も見た目も。
何からすれば……何から変えれば………
どんな私でもきっかけさえ掴めれば生まれ変わる。
出来る……出来るの。
そう自分に言い聞かせて管理人さんの家の前、ドキドキしながらインターホンを押す。
歳は幾つだろう?
見た目だけで判断したら60代?
いつも小綺麗にしていて優しそうな方。
「あれ?2階の子?どうしたの?何かあった?」
すでに家賃を滞納しているにも拘らず、そのことを責めてこない。
それより「ちゃんと食べてるか?今の子は食べんからなぁ」と身体のことまで心配してくれて、田舎の亡くなったお爺ちゃんを思い出して涙が溢れた。
ゴソゴソと奥からリンゴやバナナ、野菜なんかを袋に詰めてくれて手渡してくれる。
「あんたら若いうちは笑って生きないと」
泣き崩れる私に驚いて食卓の椅子に座らされた。
ほうじ茶を出してくれて「どうしたんね?」と深刻そうな顔で聞いてくれる。
その声も優しくてまた溢れてしまう。
私には何もありません。
だからこうするしかなかったのです。
生活していく為には時に曝け出さなければならない。
持っているもの全部を武器にして。
「あの、家賃のことなんですけど」
「ん…?あぁ、良いよ、待つよ」
わかってるから、と頷いてくださいました。
甘えても良いのでしょうか。
1ヶ月……2ヶ月……と滞納してしまう日々。
もう待ってはくれないだろうな。
いよいよ退去命令が下ってしまうかも。
他人の私にいつまでも優しい人な訳じゃないことくらいわかってる。
大学も辞めなきゃいけないのかな。
ここまで来たのに何も残せなかった。
夜の世界も何度もトライしようとしたけど。
冷や汗と動機が止まらなくなる。
逃げてちゃダメだ、田舎に帰るくらいなら何だって出来るはず。