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どこまでも玩具

第8章 任された事件


「みぃずき!」
 登校中にアカに会った。
 何故か反対方向から来た。
 学校から。
 寝ぼけ眼で様子を窺う。
「どした?」
「ちょっと来てくれ!」
 手を引いて向かった先はアカの家。
 意味がわからない。
 アカは玄関で周りをキョロキョロ見回し、サッと素早く入った。
 俺もそれに続く。
「お、瑞希に会えたんだ」
「家まで行くつもりだったんだけど、偶然ね」
 金原もいる。
 あれ、髪切った?
 アカはすぐに俺の靴を片付け二階に促した。
 カーテンを閉め切ってる部屋。
「ごめん、みぃずき……いきなり悪かった」
「いや……まぁ、事情さえ説明してくれれば」
 今なら全てが麻痺してるから、何を聞いても大丈夫だ。
 なぜか。
 そんなの一つだ。
 朝、類沢から着信が入っていた。
 何を言おうとしたかわからない。
 知りたくなくて、返信はしてない。
 臆病だな。
 本当に。
 なにか、云われてはいけない言葉を云われそうで恐かったんだ。
 類沢にだけは、見放されたくないと思う気持ちがあったんだ。
 そういうことにする。
 でなければ説明つかない感情が出て来てしまう。
「瑞希、おーい」
「あぁっ、わりぃ」
「シッ」
 アカが口を塞ぐ。
 鋭く耳をそばだて、何かを確認してから手を離された。
「……なに?」
「大きい声、出さずに聞いてくれないか?」
「わかったよ」
 どうせ出ないし。
 アカは深呼吸をして言った。
「父さんのことは話したよな」
 ああ。
 あの時の。
 幼いアカを傷つけ、それによってアカに殺されかけた父親。
 入院してるんだったか。
「父さんが脱走して一年になるんだけど、昨日電話が来たんだ」
「えっ」
 金原もまだ聞いてないようだ。
「家電か?」
 アカは蒼白な顔で首を振る。
 それから携帯を取り出した。
「……嘘だろ」
「これさ、父さんと別れてから買ったんだよ。わかるはずねぇのに」
 寒気が三人を包む。
「家もバレたのか?」
「多分……まだ」
「多分?」
「電話で、ただ『会いに行くよ、哲』ってだけ聞いて……」
 何も言えない時間が過ぎる。
 アカが刺すほど殺意を覚えた人物。
 詳しくは知らないが、相当酷い仕打ちを受けたのだろう。
「学校は、どうすんの?」
「……通う。家より安全だから」
 意味深な言葉に聞こえた。

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