どこまでも玩具
第6章 剥がされた家庭
ピンポーン。
ガバッと勢いよく起き上がったせいで腰に激痛が走った。
後味いい夢で良かった。
急いで着替え、玄関に向かう。
あれ。
俺、こんなに元気だったっけ。
首を傾げてドアを開ける。
「よっ瑞希」
「みぃずき、久しぶり」
「金原……アカ」
二人は微かに笑顔を浮かべ、紙袋を差し出した。
「栄養たっぷり弁当持ってきたよ」
「金原がね」
「アカもだろっ」
「仲直り……したんだ」
俺の一言に二人が振り返る。
そして、頷いた。
「この四日間、色々あったんだ」
「ずっと来れなくてごめん」
俺は首を振った。
だって、こうして三人になるのも久しぶりで嬉しかったから。
「あれ? 意外に部屋綺麗だな」
気合いを入れてきた金原が拍子抜けたように云う。
「あぁ、それは昨日る……」
違う。
これは言わなくていい。
「る?」
「昨日は身が軽かったから……部屋掃除出来たんだよ!」
金原は眉をしかめたあと、ふっと顔を緩ませた。
「それは良かった」
良かった。
そうだな。
一昨日の俺には絶対言えないセリフだもんな。
美里が出て行って。
一人で腐って。
類沢が来なければ、いつまでも。
「みぃずき、台所借りるよ」
「あっ、あぁ」
それから二人が弁当を温めて、卵焼きを四苦八苦しながら焼いた。
どちらかというと一人暮らしが長いアカの方が手慣れていて、金原が足を引っ張ったようだ。
ごめん、といいながら差し出され苦笑してしまった。
類沢は料理がうまいんだな。
比較してしまった自分を恥じる。
時刻は七時。
健康的な朝食だ。
二人も一緒に席につく。
「アカの提案だったんだ。瑞希の家に食事届けようって」
「お金ないからさ、金原に色々調達してもらったわけ」
茄子の味噌煮をもぐもぐしながら相づちを打つ。
やはり市販の味は確かだ。
力が漲ってくる。
余程、この四日間ろくな食事してなかったんだな。
類沢も呆れるわけだ。
「で? なにがあったの?」
二人が驚く。
「なにが……って余裕だな」
「今日は元気づけに来ただけなのに」
「え? 聞いちゃまずかった?」
「じゃなくて」
「い、いや。アカ。この流れのうちに話しちまおうぜ」
「……そうだね」
丁度食べ終え、箸を置く。
「三日前の話からな」