どこまでも玩具
第6章 剥がされた家庭
あの騒ぎのあと、有紗が改めて類沢に告白したらしい。
その経緯が複雑だったようだ。
「まず、あの日有紗がオレの家に泣きながら来たわけ。聞いたら類沢と瑞希とアカが大変てしかわかんないし」
「なぜか呼び出されて三人で状況を確認したっていうか」
つまり、有紗が金原とアカを引き合わせたと。
気がきくのか、空気が読めないのか。
「だからっ! なんで私が伝書鳩みたいに喋んなきゃいけないのよ! あんたらが直接会話しなさいよ!」
有紗が我慢の限界というように叫ぶ。
「類沢先生が嫌いならそれでいいからさ、ややこしくするのやめて仲直りしなさいよっ」
簡単にいう。
しかも自分勝手。
アカと金原は目を見合わせて笑った。
「私は! 言っとくけど! 類沢センセが好きなの! 諦めきれないのっ」
「ホモでも?」
「そうよっ悪い?」
「悪いよね」
「まぁ……うん」
アカはぐるりと目を回してせせら笑う。
「流石の金原も呆れてさ。とにかく、二人で収めないと有紗の暴走が止まらないことがわかった。で、帰る頃には普通に会話してたね」
「大変だったな」
有紗のことだ。
金原に告白するときもひっぱりまわされた自分だからわかる。
あれは止められない。
女子は恋に強い。
「で、こっからが本題で」
「あ、まだ始まってなかったの」
「ああ」
翌日のことだ。
「有紗さんは遅刻ですね」
篠田がそう告げた。
反省文を手渡すオレ達に彼の冷たい視線が突き刺さる。
「身体検査しなくても大丈夫なんだろうな」
アカはパッとポケットの中からハンカチを取り出してヒラヒラ振った。
他にはなにも入ってないということだろうか。
「心配かけましたあ」
篠田は舌打ちをして出て行った。
「有紗のやつ……」
「保健室でしょ」
金原はため息を吐く。
「だよなぁ……」
「で、行ったら有紗が類沢に告白してたと」
俺はラスト一個の卵焼きをつまんで尋ねた。
だが予想に反して二人は肩を落とす。
「だったらまだ良かったかもな」
「え?」
アカはポケットから携帯を取り出し、フォルダから何かを取り出す。
「これ、見て」
俺はその画像を見て、絶句した。
「雛谷の授業覚えてる?」
俺は記憶を手繰る。
「……確か、一年のときだけ教わったっけか」
「あいつ、超がつく変人なんだよ」