どこまでも玩具
第6章 剥がされた家庭
金原は、寒気を押さえるように腕をさする。
一体なにがあったのか。
「で? 授業放棄してまで類沢先生に会いに来た理由はなにかな」
雛谷はガシガシ頭を掻いて、眠そうに云った。
そういうお前はどうなんだ。
舌先まで出掛かった言葉を呑む。
「急用があったんですよ。せ、先生こそ。どうして、ここに?」
雛谷はニイッと微笑み、ポケットから鍵の束を出した。
そして、反省室の通路を見回す。
「ここね、管理してるの」
「え」
反省室を管理。
確かに、必要なような。
よく理解できないような。
金原はアカとアイコンタクトをする。
「ま、滅多に仕事はないんだけどね。今日は一人預かってるから、今君たちが降りてくの見て追いかけて来たわけ」
「……見られちゃまずいもんでもあるのかよ」
低く呟いた金原に雛谷は爽快な笑い声を浴びせる。
チャリチャリと鍵が鳴る。
「面白いねぇ、金原くん。男子高生の妄想は広がりようが興味深い」
ざわり。
なんか、気味悪い鳥肌立った。
「預かってる生徒の名前は?」
アカは冷静だ。
しっかり雛谷の真正面に行き、圧倒するように目を合わせる。
「へぇ? 類沢先生を探しに来たんじゃなくて、その子を探しに来たのかな」
「名前はなんですか」
「仁野有紗だよっ! ヒナヤン早くこっから出して!」
「はい?」
「そう、まさにそれ。そんな感じに驚いた」
俺は状況を整理する。
有紗が朝いなくて、類沢の元に行ったのかと思えば彼は反省室に行っていた。
反省室には類沢がいなくて、雛谷がいて反省室の管理をしてると言った。
一人預かってる生徒がいるらしく、その名前を尋ねたら有紗の叫び声が聞こえたらしい。
「つまり、有紗は……保健室に訪ねてって類沢に反省室連れてかれたか、反省室で告って閉じこめられたかってこと?」
「瑞希意外に酷い方の想像をするな」
だって、それくらいしか思いつかないし。
アカが麦茶に口をつけて、思考をまとめるようにぐるぐる視線を変える。
コップを置くと、言いづらそうに口を開いた。
「みぃずきの予想が半分正解かな」
「マジかよ」