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雨とピアノとノクターン

第11章 暗躍編:おかえり

「で…?鳴海の停学処分は取り消しになったわけか。よかったじゃないのー?」
 バー・Lucasのマスター、タカシはグラスのくもりを磨きながら佐屋の話を聞いている。
「カプサイシンの煙は効きましたよ。アドバイス有難うございました」
「煙っていうか……たまたま暴漢避けに持ってたクマよけスプレーだよ。NYに居た時に護身用に持ってたけど、結局使う機会がなかったんだよねー。オレもドンくさいからいざとなると」
 タカシは当時のことを思い出すといつも苦笑いをしている。カウンター越しに真正面に座っていた、彼の恋人の山口瑠歌が“まぁまぁ”と慰める。二人はNYで《色々》経験しているらしく、暗黙の了解があるらしい。
「しかし鳴海にそっくりな子がいるなんてねー。今度新宿北山工業にでも見に行っちゃおうかな」
 タカシは坂下大我の存在に興味がかなりあるらしく、不機嫌そうな鳴海の顔をちらちらと見ながら冷やかしていた。

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