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雨とピアノとノクターン

第1章 出会い編:金髪の野良猫

渡り廊下に差し掛かったとき、柱の影から眼鏡の位置を顔で弄りながら、見知った人間が現れた。
 生徒会執行部、副会長、薬師寺宏だった。
「…おはよう、会長。ずいぶんと珍しいものを見せてもらったよ。君が不良を自宅に連れ込んでいるって噂、本当だったんだね…」
 相変わらず、人の気持ちを逆撫でるのが上手い。
「…さすが副会長。僕の情報に関してはとても早耳だね?僕の失脚材料でも集めているのかな?」
「…まぁね。でも、今朝の議題は既に決まっているようだよ?青葉学園生徒会会長の君が、とても粗野で下品なサルを飼い始めた件について…と」
 僕は薬師寺のその言葉が終わらぬうちに、彼の両手首を掴んで捻り上げた。
「薬師寺君、君も僕と同じ進路は理Ⅲ希望だっけ?余計なことばかりさえずるようなら、僕は今ここで、君の大好きなメスが将来握れなくなるように両手首をもう一捻りしてあげてもいいんだけれど…どうする?」
 軽口を叩く下衆だ…。僕はそんな彼を冷笑しながら、解放してやった。
 薬師寺は舌打ちしながら、捨て台詞を吐いて去っていく…。
 僕は正直いうと、政治には興味ない。この学園の全権を掌握し、僕は生徒会執行部の最高責任者に就いてはいるが…さっきの薬師寺のような愚かなヤツに牛耳られるのが、煩わしいという理由なだけで、今の席に座っている。
 彼が何故この席に固執しているのかよく解らない。だが今も、将来も、奴に負けるような無様なことだけは避けたいと思った。

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