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雨とピアノとノクターン

第2章 出会い編:一年生の風紀委員長

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 今日は久しぶりに僕のバイトが休みだったこともあり、二人でゆっくりと夕食を食べた。
「なぁ…佐屋は、いつもバイトしてて偉いよなぁ…オレも…バイトしてぇんだけどさー」
「…意欲があるなら、やってみたらいいよ。努力して得られる報酬の楽しみって、鳴海は味わったことないのかい?」
「…ん、そーでもねーよ。昔、ガテン系で日当稼いだことあるし…。オレって体力には自信あんだぜ?」
 鳴海はご飯粒を飛ばすような勢いで笑う。
「鳴海ー!汚いよ!ご飯粒が飛んでくる!」
「あ、悪りぃ、悪りぃ!!」
 性格もまるで正反対の僕らなのに、何故、こんなに一緒にいて安らぐのだろう…。
 夕食の後片付けを済ませ、僕は母のベーゼンドルファーの前に座った。鳴海が何か弾いて欲しいとせがむので、ショパンのノクターンを弾きはじめた。
「…なんか、いい曲だな。オレも…こんな風に気持ちよく弾いてみたい」
 優しくて切ない曲想を彼は気に入ったという。あんなに暴れん坊な彼が、僕のピアノで大人しくなるなんて、ちょっと不思議だった。
「…自分で弾いてるみたいに、雰囲気味わってみる?」

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