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雨とピアノとノクターン

第3章 出会い編:罠

僕はその日の朝、生徒会室に直接出向くつもりだった。
 今頃は鳴海は温水プールで気持ちよく泳いでいることだろう。うちの学園の競技用プールは50mもあり、最新の設備を誇っていた。
「確かに出入り自由だけれど…無断で入って水泳部に叱られなきゃいいけれどな…」
 ところが僕のそんな心配よりもはるかに想像を絶することが起きてしまったことを、僕はこのとき知る由もなかった。
 渡り廊下に差し掛かったとき、廊下の床材さえ削り取ってゆくような勢いで、大勢の人間が慌てて走って行く。
「大変だ!誰かプールで溺れたって!!」
「バカ野郎!今日はまだメンテの時間じゃねーだろう?」
「それが、生徒の利用時間外の方がいいからって、予定より早くなったらしく、それで排水始めたら、誰かが吸水口に足をとられて引きこまれたって!」
 走り去っていく水泳部の部長たちの言動を耳にした途端、僕は自分でもしんじられないほど動揺せずにはいられなかった。

 …まさか!?鳴海っ!?

 僕は我を忘れて走った。温水プールにはどっと野次馬が押し寄せている。
僕のすぐ後ろに、井野口が控えていた。
「佐屋様、鳴海様が…」

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