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とある高級住宅街に広大な日本庭園を抱える邸宅がある。その一隅に、小さな庵があった。
「さて…一服召されるといい…」
　客人としてのもてなしとまでいかないが、僕の前に副理事長自ら立てた茶が淹れられた、年代物の天目茶碗が置かれた。
「…頂戴します」
　僕は病院から直接副理事長宅を訪問していた。裏で手を引いている者が誰であるのか、《《確認》》するために。
　僕は茶碗を手に取り、ゆっくりと色や香りを味わいながらそれを飲み干した。
「此度の出来事、聞き及んでいるが…」
「…申し訳ございませんでした。事故の当事者、鳴海悠生は僕の学友です」
「…それは気の毒なことをした」
「…副理事長、僕もそろそろ、本当のことを知りたく、こうして参りました」
　茶室の障子には外の自然光が差していた。これからきな臭い話を始めようとしているというのに、とても皮肉だった。
「…会長、お前さんは聡い。故にごまかしはこれ以上無理だろうな。ならば、話しておくことにする」
「…はい」