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雨とピアノとノクターン

第4章 出会い編:権力者

「…防犯カメラの画像に仕掛けがしてありました。セキュリティモニターに細工が出来るのは彼しかいませんから」
 僕は副理事長を見据える。そろそろ僕も道化のふりはウンザリだった。
「…あの小僧…鳴海悠生は邪魔でな…。あやつの後見人は政界に精通しており、我らには目障りじゃからな…。小僧に消えてもらって、黙らせるつもりでいたというに…とんだ茶番になったわ…」
 とんだ茶番…そのセリフは僕が言いたい言葉だった。感情を抑えたまま、ポケットから太めの万年筆を取り出す。
「…ご存じですか、副理事長?マイクロSDなるものが出来たおかげで、僕もスパイごっこのような真似事が出来るようになったんですよ?」
 僕の笑みが不気味に映ったのか、副理事長が眉間に皺を寄せた。
「…このペン、動画録画が出来るんです。このペンをそのまま、警察に持ち込んだら…どうなるか、ご存知ですよね、副理事長?ついでに理事長を引きずり下ろすクーデターも明るみに出ることとなる」
 駆け引きは最後まで種を明かさない方に軍配があがる。
「…そ…それをよこせ!悪いようにはせん、お前さんの要求を聞こう。だから…」

 本当に見苦しい老獪だ…。

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