テキストサイズ

雨とピアノとノクターン

第5章 ピアノ編:覇者の美学

「僕は…挑んで来るヤツに負けたくないだけだよ。それに…負ける気が全くしない」
 大した自信だと鳴海は思った。たしかに、今まででも佐屋が誰かに屈したという話は一切聞いたことがない。
「…じゃあ、台場君に丁寧にお返事を書かないとね…」
 佐屋はノートPCを開くと、暁学園気付で台場翔宛てにメールを打ち始めた。
「なぁ…、佐屋?向こうはちゃんと手紙で申し込みが来てるのに…そんなんでいいのかよ?」

 …ホントに怒ってるなぁ、佐屋の奴。

 鳴海はおそるおそる、佐屋の肩口から画面を覗き込んだ。
「○月○日のピアノ演奏の勝負、お受け致します………」
 ほとんど、用件のみで淡々と綴られている。
「…なんでうちの第二ホールなんだよ?なるべく人が入る体育館とかの方が良くねぇか、佐屋?体育館のステージだって、グランドピアノが置いてある…」
 すると、佐屋は画面を見つめる視線を一切動かすことなく、鳴海に応えた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ