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雨とピアノとノクターン

第6章 ピアノ編:完敗?

 暁学園からの帰り道、すっかり元気を失くした鳴海は、肩を落として家に帰って来た。
 玄関には佐屋のコインローファーがきちんと揃えてあった。

 佐屋…帰っているんだ。

「…ただいま」

 リビングの扉を押し開けながら、鳴海はゆっくりと入っていくと、奥のピアノの部屋で、やはり演奏の音が聞こえていた。

 佐屋………。

 音に手繰り寄せられるように、鳴海は佐屋のお母さんの形見である、ベーゼンドルファーの置かれた部屋へ入った。
 激しい嵐のような演奏。立て続けに出される、華麗な指運び。ツーオクターブを滑らかに駆け抜ける。パッセージに身を任せ、佐屋は目を閉じたまま演奏し続けている。
 喩えるならレフトハンドとライトハンドのダンス…。優雅にして力強い佐屋の演奏は、いつも鳴海の心をとらえて離さない。

 佐屋、この曲弾くんだ…。

 そういえば、前に一度だけ弾いていてタイトルを聞いたことがあったっけ。
「カッケーっ!なぁ、なぁ?これ、なんて曲だってばよ…?」
 鳴海の言葉に照れながら佐屋はとびきりに綺麗な微笑で答えた。
「ショパンの…革命のエチュード…」

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