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雨とピアノとノクターン

第6章 ピアノ編:完敗?

「…どうしても、勝負受けるのかよ?オレがこんなに頼んでも…ダメなのか、佐屋?」
 鳴海は台場の超絶なピアノの腕前を佐屋に伝えたというのに、一向に怯まない佐屋に余計に不安になる。
「……それ、どういう意味、鳴海?」
 歯切れの悪い鳴海に彼は問う。
「……オレ…オレって…佐屋が大好きなピアノを|勝負《そんなもの》になんて出して、お前が傷ついたりしないか心配だから」
「…鳴海…それって、もしかして僕が彼に負けると思っているの?」
 その瞬間に佐屋の表情がガラリと怒りの色に変わる。無表情に見えたりもするが、この顔はかなり怒っている顔だ。
 佐屋はピアノのスツールから立ち上がると、無言のまま、鳴海の目の前に立った。
「僕は…君のために絶対に勝つ予定だから。なのに、君は僕が勝つことを信じてはくれないの?」

 佐屋……怒ってる。

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