雨とピアノとノクターン
第1章 出会い編:金髪の野良猫
両親を亡くし、その悲しみを共有する兄弟もいなかった僕は、自力で立ち直るしかなかった。
悲しいと思うから悲しい…。そんな変な理屈で感情を封じ込め、僕は優等生という仮面を被った。
勉強もそつなくこなし、武道も一通り体得した。
その結果…僕は学園で絶対的な支持を得、学園中の生徒はもちろんのこと、
教師陣らの権力さえ掌握したのだ。
そんな退屈な世界の住人だった僕の前に、鳴海は現れた。
彼にルールは通じない。
だから…もしかしたら…
僕はそんな自由な彼に強烈に恋焦がれたのかもしれない。
鳴海がバスルームにいる間、僕はリビングの隣の部屋でピアノを弾いていた。
母はよくここで、ブラームスを子守唄代わりに弾いてくれた。二台あったグランドピアノは、新しい方だけを売り払った。母が昔から使っていた、ベーゼンドルファーだけを残して。
ピアノバーで弾く曲はジャズばかりだ。もともとクラシカルな曲しか弾けなかった僕は独学でクラスター奏法を学ぶしかなかった。
「……すげぇな。ピアノ、弾けるんだ?」
いつの間にか、鳴海が部屋の入り口に立ち、ピアノを弾く僕を見ていた。
僕は慌ててピアノの蓋を閉じようとすると、鳴海が歩み寄って手で止めた。
「オレ…こういう楽器に…縁がなかった」
「なら…弾いても、いいよ」
「…ホントか?ホントにいいのかよ?」
悲しいと思うから悲しい…。そんな変な理屈で感情を封じ込め、僕は優等生という仮面を被った。
勉強もそつなくこなし、武道も一通り体得した。
その結果…僕は学園で絶対的な支持を得、学園中の生徒はもちろんのこと、
教師陣らの権力さえ掌握したのだ。
そんな退屈な世界の住人だった僕の前に、鳴海は現れた。
彼にルールは通じない。
だから…もしかしたら…
僕はそんな自由な彼に強烈に恋焦がれたのかもしれない。
鳴海がバスルームにいる間、僕はリビングの隣の部屋でピアノを弾いていた。
母はよくここで、ブラームスを子守唄代わりに弾いてくれた。二台あったグランドピアノは、新しい方だけを売り払った。母が昔から使っていた、ベーゼンドルファーだけを残して。
ピアノバーで弾く曲はジャズばかりだ。もともとクラシカルな曲しか弾けなかった僕は独学でクラスター奏法を学ぶしかなかった。
「……すげぇな。ピアノ、弾けるんだ?」
いつの間にか、鳴海が部屋の入り口に立ち、ピアノを弾く僕を見ていた。
僕は慌ててピアノの蓋を閉じようとすると、鳴海が歩み寄って手で止めた。
「オレ…こういう楽器に…縁がなかった」
「なら…弾いても、いいよ」
「…ホントか?ホントにいいのかよ?」