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雨とピアノとノクターン

第1章 出会い編:金髪の野良猫

「…ああ。ここがCの音だよ」
「シー?」
「ドレミのドだよ」
「難しいな」
「ツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー…で、オクターブだよ」
少し髪の濡れた鳴海から、シャンプーの匂いがした。
 この家に、自分以外の体温を感じた。
 とても…不思議な感覚だった。

 ピアノをおもちゃのようにしてはしゃぐ鳴海は、普段の不良ぶった態度からは到底想像出来ないものだった。
 やがて…夜が明ける時間となった。白い朝がすぐそこにある。
「…おっ、そろそろ帰る。サンキューな、佐屋…」
 鳴海はニコリと笑った。単純で…難解な僕とは全く違った精神構造だと思った。
「…待って」
「……?」
「……どうやら僕は、君のことをよく知らないまま、誤解していた」
「…?」
「……君のこと、嫌いじゃないよ、僕は」
「…ああ、ありがとな…」
「……君さえ良ければ…だけど」

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