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雨とピアノとノクターン

第7章 文化祭編:ラストダンス

キンモクセイの強い香りの生垣に佐屋を引っ張りこみ、鳴海は隠れて佐屋の唇を奪うようにしてキスをした。

 えっ?…

 目を見開いたまま、佐屋は鳴海にされるがままだったが、一度唇を離すと、今度は自ら彼を抱きしめ深くキスをした。
「……困るなぁ、鳴海。こんなふうに誘われたら、夜までいろんなことが手につかなくなりそうなんだけれど」
 佐屋は胸のうちの全ての熱を吐き出すように熱い溜息をついて苦笑した。
「……うん、悪りぃ」
 謝る鳴海の顔が本当に愛しく思えた。
「そうだね…。謝るのは、僕の方だった。大事なことを忘れていたよ。どんなに忙しくても…君のこと、忘れずにいたつもりだったけれど…それだけじゃダメだったよね…」

 本当はすぐにでも君のことを抱きたいけれど…。

 佐屋は散らばった生徒会のファイルと資料を拾いあげながら、微笑んだ。
「…大好きだよ、鳴海。先に家で…いい子にして待っててね」

 夜は君は眠れないかもしれないよ?
 でも、
 僕にちゃんと付き合ってもらうからね…。

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