雨とピアノとノクターン
第8章 暗躍編:生徒会長失脚計画
「解析法の理論は完璧だけど…あの数学教師と話すと長くなるな…今日は予備校、間に合うだろうか…」
信号が変わって、スクランブルの交差点にどっと人並みが行き交う。その波をうまく掻い潜りながら、佐屋はスマホの表示に出ていた時計で時間を確認した。
「たしか…任意のイプシロンをx2乗に当てはめて…」
つい、ブツブツと声に出してしまう癖は物心ついたころからのものだ。そのお蔭というわけではないが、満員の電車の中などでは、自分の周囲には空間の余裕が出来る。明らかに不審がられているというか…。ブツブツと数式や英単語を復唱している彼の姿が、傍目からすればたしかに少し気味悪く映る。
佐屋の通う予備校は、繁華街を抜けた先にある。駅を下りてそこを抜けるときには、同年代の他校の生徒たちもまっすぐに家に帰ることもなく、ブラついていたりしている。
予備校が近くなる頃には、佐屋は参考書を開いて歩きながら予習を始める。
勉強はイヤじゃない。
僕は…解らないことをそのままにしておくのが、とても気持ち悪くて不快だから。
故に彼は学び、知識として「知り得ること」を快感に思った。それは鳴海と出会って一緒に生活するようになった今でも変わらない。
信号が変わって、スクランブルの交差点にどっと人並みが行き交う。その波をうまく掻い潜りながら、佐屋はスマホの表示に出ていた時計で時間を確認した。
「たしか…任意のイプシロンをx2乗に当てはめて…」
つい、ブツブツと声に出してしまう癖は物心ついたころからのものだ。そのお蔭というわけではないが、満員の電車の中などでは、自分の周囲には空間の余裕が出来る。明らかに不審がられているというか…。ブツブツと数式や英単語を復唱している彼の姿が、傍目からすればたしかに少し気味悪く映る。
佐屋の通う予備校は、繁華街を抜けた先にある。駅を下りてそこを抜けるときには、同年代の他校の生徒たちもまっすぐに家に帰ることもなく、ブラついていたりしている。
予備校が近くなる頃には、佐屋は参考書を開いて歩きながら予習を始める。
勉強はイヤじゃない。
僕は…解らないことをそのままにしておくのが、とても気持ち悪くて不快だから。
故に彼は学び、知識として「知り得ること」を快感に思った。それは鳴海と出会って一緒に生活するようになった今でも変わらない。