雨とピアノとノクターン
第8章 暗躍編:生徒会長失脚計画
一心不乱に勉強し続け、彼は飛び級が出来るほどの秀才と化した。
都内で有名な進学校である青葉に通いつつも、そのTOPの座に甘んじることなく、彼は知識を蓄え続けている。
ただ、良いことばかりではない。おかげで彼の視力は成績と反比例していた。唯一の弱点と成りうるが、眼鏡がないと生きてゆけないほど、視力に不自由を感じている。すぐに度が合わなくなってくると、佐屋は眼鏡を指で擦り上げながら、対象物を凝視してしまう癖がある。
もうあとちょっとで予備校のビルが見えるであろう場所で、佐屋のすぐ前方から数人の高校生らしき集団が歩いてきた。
だらしなく着崩した制服。腰穿きしたズボンの横からはウォレットチェーンが無造作に垂れ下がっている。やたら髪の毛が逆立っている者もいる。クチャクチャと口を動かしているところを見ると、どうやらガムを噛んでいる者もいるらしい。
あ………。
その集団の中で、佐屋は異彩を放つ者を見つけた。人目を引く見事なまでの金髪。猫の毛のように柔らかそうで、そのくせまとまりのないクセ毛のよう。
そして、空色の大きな瞳。
怠惰な生活に溺れ落ちた者たちのなかで、彼は一際目立っていた。
(え?もしかして、鳴海?)
こんなとき、視力の悪い自分を呪わしく思ってしまう。またいつものように、つい、凝視してしまった。
目を合わせたつもりでもなかったが…。
『彼』と視線が合った。
そう、自分は一瞬で、近くの建物の壁に襟ぐりを掴まれて押し付けられた。その瞬間にようやく気付いた。鳴海じゃない。
佐屋は制服のネクタイを、イヤというほどその男子に引っ張り上げられる。
「てンめー、オレになんか用でもあるのかよッ!?」
自分が今、暴力を受けようとしている最中で、佐屋はホッとしていた。不思議とまるで他人事のように冴えた頭で分析しているもう一人の自分がいた。
「よかった……鳴海じゃない」
都内で有名な進学校である青葉に通いつつも、そのTOPの座に甘んじることなく、彼は知識を蓄え続けている。
ただ、良いことばかりではない。おかげで彼の視力は成績と反比例していた。唯一の弱点と成りうるが、眼鏡がないと生きてゆけないほど、視力に不自由を感じている。すぐに度が合わなくなってくると、佐屋は眼鏡を指で擦り上げながら、対象物を凝視してしまう癖がある。
もうあとちょっとで予備校のビルが見えるであろう場所で、佐屋のすぐ前方から数人の高校生らしき集団が歩いてきた。
だらしなく着崩した制服。腰穿きしたズボンの横からはウォレットチェーンが無造作に垂れ下がっている。やたら髪の毛が逆立っている者もいる。クチャクチャと口を動かしているところを見ると、どうやらガムを噛んでいる者もいるらしい。
あ………。
その集団の中で、佐屋は異彩を放つ者を見つけた。人目を引く見事なまでの金髪。猫の毛のように柔らかそうで、そのくせまとまりのないクセ毛のよう。
そして、空色の大きな瞳。
怠惰な生活に溺れ落ちた者たちのなかで、彼は一際目立っていた。
(え?もしかして、鳴海?)
こんなとき、視力の悪い自分を呪わしく思ってしまう。またいつものように、つい、凝視してしまった。
目を合わせたつもりでもなかったが…。
『彼』と視線が合った。
そう、自分は一瞬で、近くの建物の壁に襟ぐりを掴まれて押し付けられた。その瞬間にようやく気付いた。鳴海じゃない。
佐屋は制服のネクタイを、イヤというほどその男子に引っ張り上げられる。
「てンめー、オレになんか用でもあるのかよッ!?」
自分が今、暴力を受けようとしている最中で、佐屋はホッとしていた。不思議とまるで他人事のように冴えた頭で分析しているもう一人の自分がいた。
「よかった……鳴海じゃない」