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雨とピアノとノクターン

第9章 暗躍編:トラブルメーカー

「なんとか坂下大我を足止めしなくてはならないな…」
「はい。私が接触してみましょうか?」
 一瞬、井野口の申し出に頷きそうになった佐屋は思いとどまった。
「いや、取り敢えず僕が新宿北山工業を尋ねてみようかと思う」
「佐屋様が?それはいけません!もしも何かありましたら…」
「井野口、心配ないよ。僕も武道の心得くらいはある。それに学校でおいそれと暴れることなど彼らにはないだろうから、大丈夫だよ」
 自ら出向くと言った佐屋の言葉に井野口はとても困った様子でいる。
「大丈夫。そんなに心配しないでくれ。そこまで言うならついてきてくれても構わないけれど、校門までだよ」
「……承知しました」
 佐屋は井野口の肩をポンポンと軽く叩く。それには“心配してくれてありがとう”という意味が込められていた。

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 佐屋は事前にトラブルが無いように青葉学園の指導部に生徒会としての交流を目的として、新宿北山工業高校にアポイントを取る許可を得た。指導部の教師は副校長まで掛け合って止めさせようとしたが、佐屋の申し出を許可せざるを得なかった。それほど佐屋は優秀で青葉学園開学以来の秀才で特別待遇であったからだ。

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