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雨とピアノとノクターン

第9章 暗躍編:トラブルメーカー

「彼の名前はね、鳴海悠生。青葉学園高校の1年生なんだ。実は見かけは粗暴に見えるけれどね、家族を早くに亡くして天涯孤独で寂しがりやなんだよ。今は僕と暮らしている。僕も…両親がテロに巻き込まれて亡くなっていてね」
 サラッと自分の壮絶な身の上話を語る佐屋に、そこにいた一同は思わず息をのむように黙り込んだ。青葉といえば常に裕福な家庭に育つエリートのイメージが先行してしまうのだが、そんな環境にこんな人間が二人もいたことが本当に信じがたいものだったのだ。
「……なんだよ……それ。嘘じゃねぇのか?お前ら青葉の人間はなんの苦労もせずにのうのうと生きて、オレらを上から見てバカにしてる連中だろうが?」
 大我は少なからず佐屋の境遇にショックを受けているようだった。それでも憎まれ口を叩かずにはいられない。そんな孤独にいながらも、友人のために奔走し、わざわざこんな高校にまで乗り込んできたのだから。

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